現代とよく似た環境汚染が起きていた

アオコと呼ばれる池や湖などの水面が、緑色の粉を撒いたようになる現象を目にしたことがあると思います。
これはシアノバクテリアという植物プランクトンが大量に増殖することで起きています。
こうした微細生物は、正常な環境では光合成を行って水生生物へ酸素を供給しますが、数の制御が不能になると、逆に酸素を奪い、さらに毒素を放出するようになります。
研究チームによると、ペルム紀末の大量絶滅では、こうしたシアノバクテリアの大量発生と水の有毒化の条件が揃っていた可能性があるといいます。
ペルム紀末は温室効果ガスの大量放出と、地球温暖化が進んでいました。
それにより地球では森林火災が頻発するようになり、急激に森林破壊が進んでいきました。
木々がなくなると、栄養豊富な土壌が、川や湖に流れ込み始めます。
すると、水の栄養分が過多になり、これを餌とする微生物が増えていきます。
また、微生物を餌にする底生生物(貝やエビ、カニ、水生昆虫など)が死滅したことで、微生物を抑制するものがなくなったと考えられます。
このため、ペルム紀末の大量絶滅後の世界では、淡水域でのバクテリアの繁殖が頻発したのです。

これは生態系の回復を数百万年という単位で遅らせた可能性が高いようです。
そして研究者が警戒しているのは、今回の発見が、非常に現代の状況と類似しているということです。
ペルム紀は火山活動が原因でしたが、現代では人類の活動が大量の二酸化炭素を放出して地球温暖化を加速させています。
その大気中に放出される温室効果ガスの割合は、ペルム紀と現代で非常に近い値になると報告する研究もあるようです。
実際現代は、地球温暖化の影響で徐々に森林火災の発生率も上昇しています。
また、工場や家庭の廃液、また森林伐採による栄養分の流入で、水質が汚染されるという現象も現代ではよく確認されるものです。
こうした状況は、放置すれば現代も大量絶滅期に突入する恐れがあることを示しています。
そして何より恐ろしいのは、今回の研究が示した環境の回復には数百万年近い時間がかかった可能性が高いという報告です。
研究者の1人、コネチカット大学のフィールディング教授は次のように語っています。
「私たちは環境問題について、数年から数十年という単位で考えることに慣れています。
しかし、ペルム紀末の大量絶滅イベントは回復におそらく400万年かかりました。
これは驚くべきことです」