約40年ぶりにイギリスで「スピノサウルス科」を発見
新種の化石は、ワイト島南西岸のブライストーン(Brighstone)で発見されました、
最初に、化石コレクターが頭蓋骨に属する2つの骨断片を見つけ、連絡を受けたダイナソー・アイル博物館のスタッフが、尻尾の大部分の骨を発掘しています。
最終的には、1億2500万年前の白亜紀初期に形成されたウェセックス累層の岩石から、計50個以上の化石が回収されました。
その後、サウスハンプトン大学、ロンドン・クイーン・メアリー大学(Queen Mary University of London)が中心となり、化石の分析を開始。
調査の結果、回収された骨断片から、スピノサウルス科に属する2種の新種恐竜が特定されました。
ワイト島でのスピノサウルス科恐竜の発見は、長年の間、研究者たちが待ち望んでいたことでした。
スピノサウルスは、映画『ジュラシック・パークⅢ』に登場し、ティラノサウルスに代わってメインを張るほどのメジャー恐竜です。
ワニのような細長い頭蓋骨を持つスピノサウルスは、陸地でも水中でも獲物を狩ることができ、食生活の幅を広げることができました。
イギリスで発掘されたスピノサウルス科の化石は、1983年に、イングランド南東部・サリー州で発見された「バリオニクス(Baryonyx)」のみとなっています。
研究チームのダレン・ナイシュ氏は「ワイト島でのスピノサウルス科の発見は、数十年前から期待されていたことでしたが、それが2種続けて見つかったことは大変な驚きでした」と話します。
1種目は「ケラトスチョップス・インフェロディオス(Ceratosuchops inferodios)」と命名されました。
直訳すると「角の生えたワニ顔の地獄サギ」となります。
その名の通り、眉間に生えた小さな角が特徴で、またサギのように水辺と陸上の両方で捕食していたと考えられることから、この学名が付けられました。
2種目は「リパロヴェナトル・ミルネレ(Riparovenator milnerae)」と命名されました。
これは、今年8月13日に惜しくも亡くなったイギリスの著名な古生物学者アンジェラ・ミルナーにちなみ、「ミルナーの川岸の狩人」と直訳されます。
ミルナーは、先述したバリオニクスを研究し、学名を付けた方です。
採取された骨格は完全なものではありませんが、2種ともに全長9メートル前後に達し、1メートル級の大きな頭蓋骨で獲物を捕らえていたと推測されています。
また、本研究から、1億2500万年前のイングランド南部には、予想されていた以上に多様なスピノサウルス類が存在したことが示唆されました。
ワイト島の白亜紀初期の岩石には、今日の地中海のような気候に包まれた氾濫原を示す痕跡が見つかっています。
それにより、水辺にさまざまな魚やサメ、ワニが集まったことで、それらをターゲットとするスピノサウルス類が繁栄したのでしょう。
ダイナソー・アイル博物館の学芸員で、古生物学者のマーティン・マント氏は、次のように述べています。
「今回の発見により、ワイト島がヨーロッパでも有数の恐竜遺跡の宝庫であることが改めて証明されました。
博物館を代表して、このような素晴らしい発見をし、科学的な研究に貢献していただいた専門家、化石収集家の方々に感謝の意を表したいと思います」
2種の化石は今後、同博物館で展示される予定です。