手出しできない王子の代わりに体罰を受ける「鞭打ち少年」という奇習があった
手出しできない王子の代わりに体罰を受ける「鞭打ち少年」という奇習があった / Credit: commons.wikimedia
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中世ヨーロッパでは王子の代わりに体罰を受ける「鞭打ち少年」が存在した! (2/2)

2022.07.10 Sunday

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鞭打ち少年に選ばれるのは「出世の第一歩」だった?

鞭打ち少年に関する歴史的記録は少ないものの、いくつかの実例が書き残されています。

たとえば、若き日のイングランド王・エドワード6世(1537〜1553)には、バーナビー・フィッツパトリック(Barnaby FitzPatrick)という少年が、体罰の代理人としてつけられていました。

1592年の記録によると、バーナビー少年は、幼いエドワード6世が汚い言葉や冒涜的な言葉を吐いたときに、代わりに鞭打ちを受けたといいます。

あまりに可哀想な役割とお思いでしょうが、実は、鞭打ち少年に選ばれることは、王宮の中で出世するための大きな一歩と捉えられていました。

1852年に、著名な作家であったハートリー・コールリッジ(Hartley Coleridge)は、次のような記述を残しています。

「代理で鞭打たれることは、高貴な血筋の者にのみ許された特権だった。下位の貴族らは、我が子がその代理に選ばれることを、名誉の第一歩として切に願っていた」

鞭打ち少年は、王族と最も親密な関係にあり、重要な情報を得ることで、より高い地位に就くことができます。

実際、バーナビー少年も王宮で最高の教育を受け、成人後には男爵となり、高名な貴族として生涯を過ごしたそうです。

幼き日のルイ15世
幼き日のルイ15世 / Credit: commons.wikimedia

その一方で、鞭打ち少年の存在が王子に反省を促したという事実に、疑問を抱く専門家は少なくありません。

例として挙げられるのは、若き日のフランス国王・ルイ15世(1710〜1774)です。

彼の家庭教師は、王子の遊び相手となるようたくさんの少年を見つけてきて、先と同様に、王子が悪さをすれば、代わりに体罰を与えていました。

ところが、ルイ15世は少年たちがどれだけ殴られようと、勉学を怠り続け、不品行な行動をやめなかったと言われています。

鞭打ち少年の効果は王子の資質によっておそらく大きく異なった
鞭打ち少年の効果は王子の資質によっておそらく大きく異なった / Credit: commons.wikimedia

鞭打ち少年を見て、心を痛めるかどうかは、王子の資質に関わっているのかもしれません。

この奇妙な風習は、あまり効果がなかったのか、あるいは道徳心が許さなかったのか、時代とともに姿を消しています。

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