大腸菌を「共生細菌」に進化させることに成功!
大腸菌を「共生細菌」に進化させることに成功! / Credit: 産総研 – 大腸菌を昆虫共生細菌に進化させることに成功(2022)
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大腸菌を昆虫共生細菌に進化させることに成功(産総研) https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2022/pr20220805/pr20220805.html
Single mutation makes Escherichia coli an insect mutualist https://www.nature.com/articles/s41564-022-01179-9

2022.08.06 Saturday

大腸菌を昆虫の中で「共生細菌」に進化させることに成功!

微生物の「共生進化」は、予想以上に簡単かつハイスピードで起こるようです。

産業技術総合研究所はこのほど、カメムシの一種から共生細菌を除去し、代わりに大腸菌を摂取させてラボ内で飼育。

その結果、わずか数カ月から1年ほどの短期間で、大腸菌の遺伝子に突然変異が起き、共生細菌に進化することが判明しました。

これにより、宿主の生存に必須な共生細菌への進化は、思っていたより容易に起こりうることが示されています。

研究の詳細は、2022年8月4日付で科学雑誌『Nature Microbiology』に掲載されました。

※ 以下、カメムシの画像が出てきますので、苦手な方はご注意ください。

「共生細菌」の代わりに「大腸菌」を保有したカメムシはどうなる?

研究チームはこれまで、昆虫および、それを宿主とする共生微生物に焦点を当ててきました。

中でも、農業害虫として知られるカメムシ類の腸内共生細菌について、積極的に研究を進めています。

今回、チームが対象としたのは、日本全国に分布する「チャバネアオカメムシ(学名:Plautia stali)」です。

チャバネアオカメムシの消化管は、後部が共生器官になっており、その内部に共生細菌(腸内細菌科Pantoea属の1種)を飼っています。

この共生細菌は、子どもの成長に欠かせないもので、母親は産卵時に、卵の表面に共生細菌を塗りつけておきます。

すると、産まれた赤ちゃんが卵の表面を吸いとって、共生細菌を獲得できるのです。(下の画像のDがその様子)

「共生細菌」を保有する正常なチャバネアオカメムシ。Dが卵殻から共生細胞を吸っている子ども。
「共生細菌」を保有する正常なチャバネアオカメムシ。Dが卵殻から共生細胞を吸っている子ども。 / Credit: 産総研 – 大腸菌を昆虫共生細菌に進化させることに成功(2022)

共生細菌を取り込んだ赤ちゃんはすくすくと発育し、飼育下では、80%以上が正常に羽化して、緑色のきれいなカメムシ(成虫)となります。

ところが、卵の表面を殺菌して、赤ちゃんが共生細菌を取り込めないようにすると、発育が極端に遅れ、ほとんどが大人になれずに死んでしまうのです。

では、共生細菌ではなく、「大腸菌」を摂取させたらどうなるのでしょう?

チームは、表面殺菌した卵から産まれた赤ちゃんに、大腸菌を含ませた水を与えてみました

すると、発育は著しく遅れ、ほとんどが死滅したものの、ごく少数(5〜10%)が生き残り、通常より小さくて茶色い大人へと羽化したのです。

共生器官も無色で未発達でしたが、内部にはちゃんと大腸菌がおり、共生細菌と同じ場所を占めていました。

また、大腸菌を保有する母親が産んだ卵には、やはり大腸菌が塗りつけられており、赤ちゃんもこれを吸って大腸菌を獲得しました。

「大腸菌」を付与されたチャバネアオカメムシ(右端は、卵表面に塗布された大腸菌の顕微鏡画像)
「大腸菌」を付与されたチャバネアオカメムシ(右端は、卵表面に塗布された大腸菌の顕微鏡画像) / Credit: 産総研 – 大腸菌を昆虫共生細菌に進化させることに成功(2022)

しかし、大腸菌はおもに、ヒトを含む哺乳類の腸内に住まう微生物であり、元来カメムシとは関係がありません。

にもかかわらず、カメムシに共生した大腸菌は、不完全な形ではあるものの、宿主の生存と繁殖を支える最低限の能力を示したのです。

では、このカメムシを継続して繁殖させることで、大腸菌がだんだんと共生細菌に進化することはないのでしょうか?

そこでチームは、大腸菌をカメムシの共生細菌に進化させるための実験を開始しました。

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