1707年の日本最大級の地震を超える「南海トラフ地震」が過去に起こっていた!
1707年の日本最大級の地震を超える「南海トラフ地震」が過去に起こっていた! / Credit: 産総研 – 紀伊半島南部の橋杭岩周辺で巨大津波の証拠を発見(2022)
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紀伊半島南部の橋杭岩周辺で巨大津波の証拠を発見 https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2022/pr20220912/pr20220912.html
Evidence from boulders for extraordinary tsunamis along Nankai Trough, Japan https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0040195122002815

2022.09.13 Tuesday

かつて和歌山県を襲った「南海トラフ地震」の巨大津波の証拠を発見!

今後30年以内の発生も危惧される「南海トラフ巨大地震」ですが、南海トラフ沿いでは、過去の歴史の中で幾度となく地震が発生しています。

中でも、1707年10月28日に起こった「宝永地震」は、記録に残る”日本最大級の地震”です。

しかしこのほど、産業技術総合研究所のチームは、和歌山県串本町にある橋杭(はしぐい)岩の地質調査から、宝永地震をしのぐ規模の巨大地震が発生し、大きな津波が同地に来襲していた証拠を発見しました。

橋杭岩は、海岸に一直線に並んだ巨岩列として知られ、その周辺には、多数の巨礫(きょれき)が散らばっています。

シミュレーションによると、これらの巨礫は、宝永地震で発生した津波をはるかに上回る威力でなければ、ここまで動かなかったようです。

研究の詳細は、2022年9月6日付で学術誌『Tectonophysics』に掲載されています。

日本最大級の「宝永地震」を超える南海トラフ地震が発生していた?

橋杭岩は、和歌山県串本町の東岸に位置する巨岩列で、南北にかけて一直線に並んでいます。

その西側には、泥岩でできた平坦な波食棚(海の波の作用により削られて平坦になった地形)が広がり、その上に、橋杭岩と同じデイサイト(火成岩の一種)の巨礫が1000個以上も散らばっています。

このことから、巨礫の数々は、なんらかの理由で、橋杭岩から分離したものと見て間違いありません。

また、巨礫の多くは、橋杭岩からかなり離れた場所まで広がっており、単に分離して自由落下しただけではないと思われます。

つまり、これらの巨礫は、地震にともなう津波によって現在の位置まで運ばれたと考えられるのです。

和歌山県串本町橋杭岩周辺の巨礫
和歌山県串本町橋杭岩周辺の巨礫 / Credit: 産総研 – 紀伊半島南部の橋杭岩周辺で巨大津波の証拠を発見(2022)

そこで産総研の研究チームは、まず分布する1311個の巨礫の位置やサイズを詳しく記録。最大級のものだと、長径7メートルに達するものがありました。

中には、台座状の泥岩の上に乗っかった巨礫も散見されています。

これらは、巨礫周辺の岩盤面が風化や波によって削りとられ、高度を下げたのに対し、巨礫すぐ下の岩盤面が、そうした侵食作用から免れた結果です。

研究チームは、これについて「巨礫が比較的長期間その場所にとどまった証拠である」と説明します。

(a)赤:橋杭岩の位置、緑:地震の範囲、(b)台座上にある巨礫、(c)橋杭岩の景観
(a)赤:橋杭岩の位置、緑:地震の範囲、(b)台座上にある巨礫、(c)橋杭岩の景観 / Credit: Yuichi Namegaya et al., Tectonophysics(2022)

次に、巨礫の数々が、1707年の宝永地震の津波によって動くかどうかをシミュレーションしました。

条件として、橋杭岩から水平距離で15メートルの範囲にある巨礫は、単に橋杭岩から自由落下しただけとみなし、それ以外の計1103個の巨礫を調査対象としています。

シミュレーションでは、コンピューター上で模擬的に津波を発生させ、その高さや流速を計算。

加えて、巨礫にかかる海水からの流体力と、巨礫と地面との間の最大静止摩擦力を計算し、「流体力が最大静止摩擦力を越える場合にのみ巨礫が動き出す」という判定を行いました。

その結果、シミュレーションにおいて多くの巨礫が動いたのですが、特に大きな巨礫など、動かない巨礫も数多く存在することがわかりました。

これはつまり、宝永地震よりも大きな津波が過去にこの地を襲った可能性が高いことを示唆します。

(a・b)泥岩層にマグマが貫入してデイサイトの「橋杭岩」ができる、(c〜f)そこに津波が来襲して、巨礫を砕き、現在の位置まで運んだ
(a・b)泥岩層にマグマが貫入してデイサイトの「橋杭岩」ができる、(c〜f)そこに津波が来襲して、巨礫を砕き、現在の位置まで運んだ / Credit: Yuichi Namegaya et al., Tectonophysics(2022)

それでは、どれほどの規模の津波であれば、これらの巨礫を動かすことができるのでしょうか?

チームは、仮説の一つとして、紀伊半島の南東沖合にあるプレート境界の「分岐断層」の活動を考慮しました。

分岐断層とは、震源となる主断層から分岐して動く断層のことで、ここでは、プレート境界のある場所から海底に向かって分岐する断層を指しています。

そして、1707年の宝永地震の津波モデルに加え、同時にこの分岐断層も動いた場合を想定すると、すべての巨礫が動く結果となりました。

さらに別の仮説として、宝永地震における断層面上のすべり量を2倍にして計算したところ、一部が動かないままであるものの、大部分の巨礫が現在の位置まで移動する結果が出ています。

いずれにせよ、これらの結果は、国内最大級とされる1707年宝永地震を上回る巨大地震が発生していたことを示唆します。

南海トラフ沿いの地震は、過去数千年以上にわたって繰り返し発生しており、この巨大地震がいつ起きたのかはわかっていません。

産総研は今後、地質サンプルの年代測定などにより、その自信や津波の発生時期を解明する予定です。

来たる南海トラフ巨大地震の防災計画を整えるためにも、こうした研究データは非常に重要な情報となるでしょう。

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