オスだけを狙って殺す細菌タンパク質を発見!
オスだけを狙って殺す細菌タンパク質を発見! / Credit:wikipedia
fungi
メスだけが生き残る仕組み —―オスを狙って殺す共生細菌ボルバキアタンパク質Oscar(オス狩る)の発見—― https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topics_20221115-1.html
A Wolbachia factor for male killing in lepidopteran insects https://www.nature.com/articles/s41467-022-34488-y

2022.11.18 Friday

東大がオスだけを狙って殺す細菌タンパク質「Oscar(オス狩る)」を発見!

オスだけ殺す毒タンパク質の名前は「Oscar(オス狩る)」と名付けられたようです。

日本の東京大学で行われた研究によれば、チョウやガに感染する細菌「ボルバキア」が、オスだけを狙って殺す仕組みを解明し、原因となるタンパク質が明らかになった、とのこと。

恐ろし気な細菌ですが、もし上手く使いこなせるようになれば、次世代の性操作技術の開発につなげられると期待されます。

しかしボルバキアたちはいったいどんな仕組みで、オスの子孫だけを選択的に殺し、メスしか産まれなくさせていたのでしょうか?

研究内容の詳細は2022年11月14日『Nature Communications』にて公開されています。

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オスだけを狙って殺す細菌タンパク質を発見!

オスだけを狙って殺す細菌タンパク質を発見!
オスだけを狙って殺す細菌タンパク質を発見! / Credit:Canva

「ボルバキア」は昆虫の半数以上に感染していることが知られている「最も成功した寄生者」と言われています。

成功の秘訣は、性システムのハイジャックでした。

これまでの研究により、ボルバキアが感染すると宿主には①オス殺し、②オスからメスへの性転換、③メスだけでも生殖できる単為生殖能力の獲得④ボルバキアに感染した卵子しか精子が受精しなくなる細胞質不和合など、4種類の変化が起こることが知られています。

これら4種類の変化は性システムのハイジャックによって発生しており、どの場合でも感染したメスを増やす方向に働きます。

ボルバキアは細胞内部に感染するタイプの寄生者であり、通常感染の他に卵子に紛れ込むことで母から子へと遺伝子のように伝染することが可能です。

そのためボルバキアは感染した種内でメスの割合を増やして感染を拡大し、繁栄を目指すのです。

4種類のうち、どの方法を採用するかはボルバキア内のバリエーションによって異なっていますが、なかでもアワノメイガというガに起こる「オス殺し」は極めてユニークな現象であることが知られています。

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Credit:東京大学 . メスだけが生き残る仕組み —―オスを狙って殺す共生細菌ボルバキアタンパク質Oscar(オス狩る)の発見—―

ボルバキアが感染したアワノメイガでは、オスは卵や幼の段階で死んでしまうようになり、(感染している)メスだけしか成長しなくなってしまいます。

感染からまぬがれた幸運なオスにとっては、競争相手が少なくハーレム状態を作ってくれるでと言えるでしょう。

(※昆虫にも免疫力があるため種内の全てが同時にメス化することはありません。また昆虫にはメスだけでも子孫を残せる単為生殖の能力を持つものが多く存在します)

しかし1匹のオスが多数のメスと交尾する極度のハーレム状態や単為生殖では遺伝的多様性が低下してしまいます。

また興味深いことに、「オス殺し」を行うボルバキアを抗生物質などで排除すると、今度はその種のメスが全滅してしまい、オスだけしか残らないことが知られています。

つまり、このタイプのボルバキアに1度感染してしまえば、体内のボルバキアが死滅したとしても、正常な生殖が不可能になってしまうのです。

東京大学の研究者たちは以前から、そんなボルバキアの「オス殺し」を引き起こすメカニズム解明を行ってきました。

結果、ボルバキアは性染色体の調節システムを利用して、オス殺しを実現していることが判明します。

たとえば私たち人間では男性がXY、女性がXXの性染色体を持っており、女性の持つX染色体の数は男性の2倍になっています。

そのため人体には、女性の持つX染色体の片方の機能をオフにする仕組みが存在しています。

一方、チョウやガの性染色体はオスがZZ、メスがZWとなっているため、人間とは逆にオスに対して調節システムが働き、2本あるZ染色体のうちの一方の機能をオフにします。

2本ある染色体の両方とも機能させてしまうと、染色体から作られる産物が過剰になってしまうため、細胞のバランスが崩れ、生命維持が難しくなってしまうからです。

逆を言えば、この調節システムを乗っ取ることができれば、一方の性別だけを殺すことが可能になります。

ボルバキアが付け入ったのはまさにこの部分でした。

チョウやガのオスは2本あるZ染色体の働きを「Masc」と呼ばれる遺伝子を使って調節しているのですが、ボルバキアに感染するとMascの機能が働かなくなり、Zを2本持つオスは死んでしまうのです。

(※そのため、もし似た仕組みが人類で発生した場合には、Xを2本持つ女性だけが死んで、男性だけしか産まれてこない「逆ハーレム」状態になるでしょう)

ただ、ボルバキアがどんなを使ってMascの機能を停止させているかは謎となっていました。

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Credit:東京大学 . メスだけが生き残る仕組み —―オスを狙って殺す共生細菌ボルバキアタンパク質Oscar(オス狩る)の発見—―

そこで今回、東京大学の研究者たちはボルバキアが作るタンパク質のうちMascと結合できるものを探索したところ「Oscar(オス狩る)」と呼ばれるタンパク質がみつかりました。

また研究ではOscarが結合するとMascが分解されてしまい、調節システムが崩壊し、全てのオスが成虫になる前に死んでしまうことも示されました。

この結果は、ボルバキアが作るOscarがオスだけを殺す、性別選択的な毒であることを示します。

またボルバキアの駆除により、逆にメスだけが死んでしまうことについては、ボルバキア感染はオス殺しに加えて、宿主の性決定遺伝子の一部を不可逆的に破壊して、自分の存在なしにメスがうまれないようにしている可能性が示されています。

研究者たちは今後、Oscarが他の昆虫のオスたちを殺せるかを調査することで、次世代の性操作技術の開発につなげたいと述べています。

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