空に発生した「波のような雲」
![アメリカ・ビックホーン山脈の上空に発生した波型の雲](https://nazology.net/wp-content/uploads/2022/12/FjfFlOsX0AQHt1d-800x600.jpg)
12月7日に投稿された雲の写真は、ワイオミング州シェリダン市から撮影されたものです。
ビッグホーン山脈の上空に、見事な波型の雲が連なっています。
![絵画のように美しい「波型の雲」が連なる](https://nazology.net/wp-content/uploads/2022/12/FjfFlE1XkAAHX5Y-900x600.jpg)
まるで、葛飾北斎の代表作「神奈川沖浪裏」が4枚並んでいるような‘絵になる美しさ’ですね。
![神奈川沖浪裏](https://nazology.net/wp-content/uploads/2022/12/Katsushika_Hokusai_-_Thirty-Six_Views_of_Mount_Fuji-_The_Great_Wave_Off_the_Coast_of_Kanagawa_-_Google_Art_Project.jpg)
これを撮影したレイチェル・ゴードン氏は、「これは特別なことで、すぐに写真に収めなければならないと思いました」と語っています。
同様の雲が発見されたのは今回が初めてではありません。
以前から世界中で(日本でも)観測されており、「ケルビン・ヘルムホルツ不安定性の雲」と呼ばれてきました。
では、どうして波のような形になるのでしょうか?
その秘密は、流体力学で解説できます。
流体力学の概念に、「ケルビン・ヘルムホルツ不安定性」というものがあります。
これは異なる密度の流体の層が、互いに異なる速度で流れるときに生じる現象です。
![ケルビン・ヘルムホルツ不安定性のシミュレーション](https://nazology.net/wp-content/uploads/2022/12/KHI.gif)
2つの層で密度や速度が異なると、その界面では安定性を保てず、交じり合うように渦が発生します。
そして大気中で同様の現象が起きて生じた雲が、「ケルビン・ヘルムホルツ不安定性の雲」です。
大気はさまざまな性質の空気(乾いた空気、湿った空気など)が層状に重なってできています。
そして高度によって風速差が大きく異なる場合があります。
![「ケルビン・ヘルムホルツ不安定性の雲」の発生メカニズム](https://nazology.net/wp-content/uploads/2022/12/fcc965df8ad34d7560cce2d84d0ac4b1-900x600.jpg)
この2つの条件が組み合わさったとき、つまり上方と下方で異なる空気の層に分かれており、上方の風速が大きく下方の風速は小さいケースでは、気流が交じり合う過程で雲が波型になるのです。
ちなみにケルビン・ヘルムホルツ不安定性の雲が見られると、上空の強い風によって天候が乱れたり下り坂になったりする可能性があるようです。
ケルビン・ヘルムホルツ不安定性の雲は、めったに観測できない貴重な雲です。
もし運よく見かけることができたなら、素早くカメラを構えてシャッターチャンスを逃さないようにしましょう。
How incredible! 😲
Rachel Gordon was treated to a textbook display of what meteorologists call Kelvin-Helmholtz wave clouds over the Big Horn Mountains near Sheridan, Wyoming, on Dec. 6, 2022. https://t.co/IKxRmREUhI pic.twitter.com/wpobYwDGcU— AccuWeather (@accuweather) December 8, 2022