グラフェンを用いたセンサーによって脳波を高精度で検知可能に。視覚と脳波を用いてロボット犬の遠隔操作に成功
グラフェンを用いたセンサーによって脳波を高精度で検知可能に。視覚と脳波を用いてロボット犬の遠隔操作に成功 / Credit:Francesca Iacopi(UTS)et al., ACS Applied Nano Materials(2023)
technology

頭に被るだけでロボット犬を操作!新しい脳波コントロールセンサーを開発!

2023.03.24 Friday

脳波を用いて「念じるだけで操作する」インターフェースはもはやSFのものではなくなりつつあります。

この分野の研究は最近進展が目覚ましく、オーストラリア・シドニー工科大学(UTS)に所属するフランチェスカ・イアコピ氏ら研究チームは、グラフェンを素材にした新しい非侵襲性センサーを開発しロボット犬を視覚と脳波でコントロールすることに成功しました。

研究の詳細は、2023年3月16日付の科学誌『ACS Applied Nano Materials』に掲載されています。

Mind-control robots a reality https://www.uts.edu.au/news/tech-design/mind-control-robots-reality New graphene sensors make for better brain-machine interface https://newatlas.com/technology/graphene-sensor-interface-thought-controlled-robot/
Noninvasive Sensors for Brain–Machine Interfaces Based on Micropatterned Epitaxial Graphene https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsanm.2c05546

脳波を検知する従来の非侵襲性センサーにはジェルが必要だった

波コントロールを実現させるには、脳の表層である「大脳皮質」が発生させる電気活動を検知しなければいけません。

脳の電気信号を検知することで、利用者の意図した通りに機械の操作へフィードバックさせる研究はある程度成功を収めています。

ただ、問題となるのは脳波をどうやって読み取るかという方法です。

視覚刺激を利用するタイプの脳波コントロールでは、大脳皮質の中でも、目から送られてくる情報を処理する「視覚野」の脳波を取得します。

視覚野は後頭部に位置する
視覚野は後頭部に位置する / Credit:Washington irving(Wikipedia)_視覚野

視覚野は主に後頭部に位置しているので、脳波はここを中心に読み取られます。

もっとも精度良く脳波を検出する方法は「針状の電極を頭に刺す」ことです。ただこうした侵襲性センサーを受け入れる人はまずいないでしょう。

そのためこの方法は実用性があるとは言えず、活用できる場面は限られます。

そこで「シートを頭に貼るだけ」「カバーを被せるだけ」といった体を傷つけない非侵襲性センサーの精度を高めることが、科学者たちの目指すこのシステムの重要な目標のとなっています。

ただ、これを達成するのは容易ではありません。

非侵襲性センサーの精度を高めるには、導電性を高めたり、センサーを頭部の形に沿ってなるべくぴったり接触させたりする必要がありますが、頭部の丸みや髪の毛がそれを邪魔しています。

装着しやすく精度の高い非侵襲性センサーが求められる
装着しやすく精度の高い非侵襲性センサーが求められる / Credit:Canva

現在もっとも有用な方法は頭皮と髪にジェルを塗布して導電性を高める「湿式(ウェットタイプ)センサー」です。

しかしこのジェルを利用した方法は、毛髪が汚れるという問題以外にも、皮膚の炎症やアレルギー反応、ユーザーの動きでセンサーがずれ易い、ジェルが乾燥していくため長時間利用できないなど、多くの問題点が存在しています。

ジェルを用いない乾式(ドライタイプ)センサーも存在しますが、湿式センサーに比べて導電性が低く、頭の形によって接触状態も変化してしまうため十分な精度は発揮できていません。

こうした背景にあって今回の研究チームは、頭の形に沿って曲がり、かつ高い導電性を備えた乾式センサーを新しく開発することを目指したのです。

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