都会では「地下の温暖化」が起きていると判明!建物が不安定になる危険も?
都会では「地下の温暖化」が起きていると判明!建物が不安定になる危険も? / Credit: canva
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都会では「地下の温暖化」が起きていると判明!建物が不安定になる危険も? (2/2)

2023.07.13 Thursday

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地下の温度上昇は都市にどんな影響をもたらすのか?

今回の研究では、米イリノイ州にあるシカゴ・ループ地区をモデルケースとして調査を行いました

ループ地区は市中心のダウンタウンを走る高架鉄道や地下鉄が集まる場所で、地下温度への影響も強いと考えられます。

調査では、ループ地区の地上と地下に150機以上の温度センサーを設置し、3年間にわたってデータを収集しました。

ループ地区の3Dモデル(色の付いた点は温度センサーの設置場所)
ループ地区の3Dモデル(色の付いた点は温度センサーの設置場所) / Credit: Northwestern University – The ground is deforming, and buildings aren’t ready(youtube, 2023)

その結果、ループ地区全体の地下温度は年間に約0.14°Cずつ上昇していることが判明しています。

また、北側の高層ビル群がより密集したエリアの方が、南側の建物がまばらなエリアに比べて、地下温度の上昇率が大きいことも分かりました。

このため地区全体では、地下温度の平均値に約1〜15°Cの開きがありましたが、温度上昇の大きい地域では、土壌の収縮により地盤の高さに8〜12mmの変位を生じさせていました

研究主任のアレッサンドロ・ロッタ・ロリア (Alessandro Rotta Loria) 氏は「数ミリというと小さく聞こえるかもしれませんし、都市の建物はある程度の柔軟性に耐えられるように設計されています」と指摘。

しかしその上で「古い建物や強度の低いインフラでは、地形の変化の影響を受ける可能性が十分にある」と述べています。

地下は層状になっているが、土壌の種類によっても変形率は変わるという
地下は層状になっているが、土壌の種類によっても変形率は変わるという / Credit: Northwestern University – The ground is deforming, and buildings aren’t ready(youtube, 2023)

さらにチームは温度上昇率のモデルをもとに、ループ地区の1951年〜2051年までの温度変化をシミュレーションしてみました。

下の図は、1951年・2022年・2051年の各時代における3つの深さの地下温度を表しています。

1つ目は地下10メートルの柔らかい土壌、2つ目は地下17.5メートルの硬い土壌、3つ目は地下23メートルの最も硬い土壌です。

これを見ると、地表に近い場所ほど年を追うごとに温度が高まることがよく分かります。

1951年〜2051年の地下温度の変化率をシミュレート
1951年〜2051年の地下温度の変化率をシミュレート / Credit: Alessandro Rotta Loria et al., Communications Engineering(2023)

ロリア氏は「こうした温度上昇と地形変化によって建物が今すぐに倒壊することはない」といいます。

ただし地形の変化が長期にわたると、建物の基礎部分への負担やひび割れを引き起こす可能性はあるでしょう。

その一方で、今回の発見は「地下の熱を役立てるチャンスにもなる」と研究者らは指摘します。

地下熱をエネルギー源としてリサイクルする!

地下温度の上昇は確かに都市インフラへの脅威となりますが、研究者は「地下熱を役立てる潜在的なチャンスでもある」と見ています。

なぜなら、さまざまな都市インフラから排出された熱を回収することで、地下の気候変動を緩和すると同時に、未開発の熱エネルギー源としても再利用できるからです。

実際にロンドン北部イズリントン地区では数年前から、地下鉄で発生した排熱を再利用して、家庭や企業に送り込み、暖房として活用するプロジェクトが進められています。

地下鉄の排熱をリサイクルする
地下鉄の排熱をリサイクルする / Credit: canva

このように「地下熱リサイクル」は実現可能なアイデアであり、地下の気候変動を緩和しながら、都市インフラのエネルギー源にできる可能性があります。

現在は冬場の熱の利用が想定されているだけですが、地下の温度上昇の影響や詳しい温度変化の分布が理解されれば、影響の大きい夏場の熱の利用法などについてもいいアイデアが提案されるかもしれません。

今後の世界の都市部では、この地下熱リサイクルを計画に入れた都市開発が必要となっていくでしょう。

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