海に囲まれていた可能性が大!
現在の火星は乾燥していて埃っぽく、水はすべて氷の形をとっています。
川も流れていなければ、広大な盆地やクレーターを埋める海もありません。
しかし太古の昔、それこそオリンポス山が形成された37億年前には、火星の至るところに広大な海や湖が広がっていました。
そこで研究チームは「オリンポス山の麓の急な崖の形成には、古代の海が関係しているのではないか」と仮説を立てています。
![オリンポス山の3Dイメージ(緑の端から急に崖になっている)](https://nazology.net/wp-content/uploads/2023/07/Figvolcanosmol-600x600.jpeg)
チームは仮説の検証のため、オリンポス山と似ている地球の3つの活火山:ポルトガルのピコ島、カナダのフォゴ島、アメリカのハワイ島を詳しく調査しました。
その結果、これらの島々の海岸線にはすべて、オリンポス山の麓に見られた急な斜面構造があることが分かったのです。
その形成理由を調べたところ、火口から噴出した溶岩が空気から海面に流れ込む際の急激な冷却によって、溶岩の粘度が大きく変化し、ほぼ真下にドロドロと落ち込むようになったことが見出されました。
![オリンポス山(OM)、右:溶岩が水に触れることで冷却され粘土が変化する様子](https://nazology.net/wp-content/uploads/2023/07/1-s2.0-S0012821X23003151-gr001_lrg-900x347.jpg)
つまり、これをオリンポス山に当てはめると、急な崖になっている高さ約6キロの辺りに海が存在したことが伺えるのです。
パリ=サクレー大の地球科学者で研究主任のアンソニー・ヒルデンブランド(Anthony Hildenbrand)氏は「オリンポス山を囲む高さ6キロの絶壁は、約37億年前の活動的な火山であったときに、溶岩が液体の水に流れ込んで形成された可能性が高い」と説明しました。
よってオリンポス山はかつて、火星の海に浮かんでいた超巨大な火山島だったと考えられるわけです。
古代の火星に海があったということは、もはや有名な話となっていますが、この位置まで海面だったと考えると驚きです。
チームはまた、オリンポス山から約1500キロ離れた別のタルシス地域の火山「アルバ・パテラ」にも同様の特徴を確認しました。
このことから、今では干からびているものの、タルシス地域は広い範囲にわたって海に覆われていたことが示唆されます。
本研究の成果は、将来の火星探査ミッションにおいて、火星の歴史と進化に関する新たな理解をもたらしてくれるかもしれません。
オリンポス山の周辺が広く海であったのなら、その地域の土壌を詳しく調べることで、初期生命の痕跡が見つかる可能性があるのです。