シロアリに擬態する新種の甲虫
シロアリに擬態する新種の甲虫 / Credit:BRUNO ZILBERMAN(USP)et al., Zootaxa(2023)
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「着ぐるみ」でシロアリの巣に潜入!?飛んでもない擬態をする新種の甲虫

2023.11.04 Saturday

ある生物が何かに姿を似せることで他の生物を騙す「擬態」は、様々な種に見られます。

彼らは捕食者から身を守ったり、逆に隙をついて獲物を捕食したりするために擬態するのです。

そしてその中には、エサを恵んでもらうための擬態も存在するようです。

最近発見された新種の甲虫「Austrospirachtha carrijoi(またはA. carrijoi)」の腹部はシロアリに似ており、これによってシロアリを騙し、エサをもらったり盗んだりすると分かりました。

ブラジル・サンパウロ大学(USP)に所属する昆虫学者ブルーノ・ジルバーマン氏ら研究チームによって報告されており、その詳細は、2023年8月23日付で動物分類学の学術誌『Zootaxa』に掲載されました。

New Rove Beetle Species Mimics Termites to Steal Their Food https://www.sci.news/biology/austrospirachtha-carrijoi-12258.html Beetle grows a fake termite on its back to trick real termites to get free meals https://boingboing.net/2023/09/08/beetle-grows-a-fake-termite-on-its-back-to-trick-real-termites-to-get-free-meals.html
A new species and morphological notes on the remarkable termitophilous genus Austrospirachtha Watson from Australia (Coleoptera: Staphylinidae: Aleocharinae) https://www.mapress.com/zt/article/view/zootaxa.5336.3.8

シロアリに擬態する新種の甲虫が発見される

新しく発見されたAustrospirachtha carrijoi
新しく発見されたAustrospirachtha carrijoi / Credit:BRUNO ZILBERMAN(USP)et al., Zootaxa(2023)

研究チームは、オーストラリア北部に生息する甲Austrospirachtha carrijoi(またはA. carrijoi)を発見しました。

これはハネカクシ科(Staphylinidae)の中でも希少なAustrospirachtha属の新種です。

ハネカクシ。様々な種が存在する
ハネカクシ。様々な種が存在する / Credit:Wikipedia Commons_ハネカクシ

ハネカクシの中には、軍隊アリの姿に似ている種が存在しており、アリと一緒に行進してその卵や幼虫を食べたりします。

また共生という形をとって、アリからエサをもらったり盗んだりするケースもあるのだとか。

今回新たに発見されたA. carrijoiも、同じく擬態によってアリからエサをもらいます。

ただし、体全体がアリに似ているのではなく、腹部だけを肥大させてシロアリに擬態しています。

A. carrijoiの腹部の下に本物の頭や脚がある
A. carrijoiの腹部の下に本物の頭や脚がある / Credit:BRUNO ZILBERMAN(USP)et al., Zootaxa(2023)

上から見ると一見普通のシロアリに見えますが、横から見るとA. carrijoiの本当の姿が分かります。

A. carrijoiはスリムな頭と体や脚を持っていますが、膨張した腹部がそれら本物の姿を覆い隠しているのです。

そしてこのシロアリのレプリカは非常に精巧であり、シロアリの頭部・腹部だけでなく触角や脚まで存在しています。

研究チームは、A. carrijoiの口は小さいため、他のハネカクシのように卵や幼虫を食べたりはしないと考えています。

一方、働きアリは相互に口で消化された食物を与える性質があり、これによって栄養やフェロモンなどを与えたり交換したりしています。

そこでA. carrijoiは、自分が擬態して仲間だと錯覚させることで、他のシロアリから栄養をもらうことにしました。

アリには消化した食物や分泌する化学物質を交換する習慣がある
アリには消化した食物や分泌する化学物質を交換する習慣がある / Credit:Sean.hoyland(Wikipedia)_Trophallaxis

しかしシロアリの働きアリと兵隊アリには眼がありません。

彼らは「見て判断する」ことができないのに、どのようにA. carrijoiを仲間だと錯覚するのでしょうか?

シロアリたちは視覚に頼らずとも、互いに触れ合った時に、その形や大きさ、表面の質感から仲間だと判別できます。

また仲間や卵に自らが分泌する化学物質を塗布する習慣があり、これが仲間や卵を見分ける助けになるようです。

実際、卵の偽物をこの卵認識物質でコーティングすると、アリたちは気づかずに卵の偽物を巣へと持ち帰るようです。

そしてA. carrijoiも同様の手法を用いているのかもしれません。

(上)A. carrijoi、(下)シロアリ
(上)A. carrijoi、(下)シロアリ / Credit:(上)BRUNO ZILBERMAN(USP)et al., Zootaxa(2023)、 (下)Canva

シロアリたちがA. carrijoiの腹部の精巧なレプリカを触ると、その形状から仲間だと錯覚するのでしょう。

加えてA. carrijoiは、シロアリから化学物質を受け取ったり、同様の成分を自分で生成したりして、シロアリたちを騙すようです。

これらを考えると、A. carrijoiは働かずにエサを恵んでもらう擬態のスペシャリストだと言えるでしょう。

一生懸命働き続けるシロアリたちとは、なんとも対照的ですね。

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