精神科病棟で亡くなる入院患者の3分の1は「死亡が回避可能」と判明?
精神科病棟で亡くなる入院患者の3分の1は「死亡が回避可能」と判明? / Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部
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精神病棟患者の死亡の3分の1は「回避可能」だった可能性がある

2023.10.17 Tuesday

精神病を患う人々が平均寿命より早く亡くなりやすいことは十分に知られています。

その一方で、精神科病棟に入院中の患者の死亡率はほとんど注目されていませんでした。

そこで豪ニューサウスウェールズ大学(UNSW)は、同国ニューサウスウェールズ州における精神科病棟の死亡率とその詳しい死因を調査。

すると、精神科病棟で発生していた死亡件数の約3分の1は「回避可能」なものであったことが判明したのです。

この結果は、精神病患者の早期死亡を防ぐために医療体制や治療法を改善する必要がある可能性を示しています。

研究の詳細は、2023年6月12日付で心理学雑誌『Journal of Psychiatric Research』に掲載されました。

Nearly a third of patient deaths in mental health wards potentially avoidable: study https://newsroom.unsw.edu.au/news/health/nearly-third-patient-deaths-mental-health-wards-potentially-avoidable-study
Mortality and cause of death during inpatient psychiatric care in New South Wales, Australia: A retrospective linked data study https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022395623002303

精神科病棟に「救えたはずの命」はどれだけあるのか?

精神病棟に「救えたはずの命」はどれだけあるのか?
精神病棟に「救えたはずの命」はどれだけあるのか? / Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

研究者らがここで「潜在的に回避できる死亡(Potentially avoidable deaths)」として定義しているのは、適切で効果的な医療介入によって防ぐことができる死亡のことであり、医療システムが十分に機能していれば発生するはずのないもののことです。

研究主任のプラムディー・グナラトネ(Pramudie Gunaratne)氏は「回避できる死亡の割合が高いことは懸念すべき事項であり、よりよい医療体制の構築が必要であることの証拠である」と述べています。

しかし一方で、精神科病棟において「潜在的に回避できる死亡」がどれくらいの割合で起こっているかは不明でした。

グナラトネ氏は「私たちは当初、ニューサウスウェールズ州における入院中の精神病患者の死亡率を他州と比較しようとしていたのですが、そもそも基準にできる死亡率が調べられていないことに驚きました」と話します。

そこで研究チームは、同州における精神科病棟での入院患者の死亡率と死因を詳しく調査することにしました。

精神科病棟での入院患者の死亡率を体系的に調べたのは、今回が初の試みとのことです。

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