「間違った記憶」を思い出すときは「正しい記憶」と脳波が違うと判明
「間違った記憶」を思い出すときは「正しい記憶」と脳波が違うと判明 / Credit:Canva . ナゾロジー編集部
brain

自分でも気づいていない「記憶の間違い」を脳波で判断できると判明

2023.10.19 Thursday

脳は記憶違いを知っています。

米国のペンシルベニア大学(UPenn)で行われた研究によって、間違った記憶を思い出してしまっているときは、正しい記憶を思い出している時と、脳波が異なっていることが示されました。

研究成果を応用すれば、本人が気付かなかった間違った記憶を特定して警告する装置が作れるかもしれません。

既存の嘘発見器は本人が正しいと信じている記憶に対しては無力ですが、新たな仕組みと組み合わせることで、嘘と記憶違いの両方を特定できます。

また「間違った記憶」を思い出しているときの脳を詳しく調べることができれば、記憶のエラーが形成されてしまうメカニズムを解明したり、それを防いだりする方法がみつかるかもしれません。

しかし「正しい記憶」と「間違った記憶」で脳活動に違いがあるなら、なぜ本人はそれを気付けないのでしょうか?

研究内容の詳細は2023年9月26日に『PNAS』にて掲載されました。

The brain has a ‘tell’ for when it’s recalling a false memory, study suggests https://www.livescience.com/health/neuroscience/the-brain-has-a-tell-for-when-its-recalling-a-false-memory-study-suggests
Hippocampal activity predicts contextual misattribution of false memories https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2305292120

「正しい記憶」と「間違った記憶」

「間違った記憶」を思い出すときは「正しい記憶」と脳波が違うと判明
「間違った記憶」を思い出すときは「正しい記憶」と脳波が違うと判明 / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

私たちのほとんどの記憶は単独で存在しているのではなく、他の記憶と結び付いています。

たとえば旅行やパーティーで食べたものを思い出すときには、食べ物の名詞だけではなく一緒にいた人や部屋の様子も連動し1つの「エピソード記憶」として思い出されます。

これまでの研究により、記憶は他の記憶と結びつきが強ければ強いほど、忘れにくいことが示されています。

また初めてのデートや初めてのキス、あるいははじめて買ったゲームなど、強い印象を与える出来事も、記憶に強く残ります。

しかし残念なことに、記憶は劣化していきます。

そして記憶が劣化すると、ある記憶がどんなエピソードと結び付いていたかも曖昧になっていきます。

さらに記憶の劣化は「間違った記憶」を生み出すことが知られています。

すると旅行で行った場所やパーティーの出席メンバーを聞かれたとき、事実とは異なる回答を行ってしまうようになります。

では、正しい記憶が作られるときと、間違った記憶が作られるときには、何か違いがあるのでしょうか?

もし違いがあるならば、活動を観測することで、正しい記憶と間違った記憶の区別ができる可能性があります。

次ページ間違った記憶を口にする瞬間、異常な脳波が発生する

<

1

2

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

脳科学のニュースbrain news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!