高速電波バースト「FRB 20220610A」が地球まで届く。イメージ
高速電波バースト「FRB 20220610A」が地球まで届く。イメージ / Credit:ESO/M.Kornmesser_Australian scientists detect most distant fast radio burst ever discovered(2023 the University of Sydney)
space

80億光年の彼方から「1ミリ秒しか持続しない太陽30年分の放射」を観測!

2023.10.29 Sunday

宇宙から地球に、ごく短い時間の電波が届くことがあります。

これは「高速電波バースト(FRB:fast radio burst)」と呼ばれており、その発生源や発生機構は、現在でも完全には解明されていません。

天体の合体や崩壊が原因だという説が主流ですが、宇宙人の活動の可能性なども検討されているようです。

そして最近、オーストラリアのマッコーリー大学((Macquarie University)に所属する天文学者スチュアート・ライダー氏ら研究チームによって、観測史上最遠の高速電波バーストが報告されました。

遠い宇宙で生じたその一瞬の電波信号は、80億年かけて地球に到着したのです。

研究の詳細は、2023年10月19日付の科学誌『Science』に掲載されました。

8 billion-year-old radio signal found by astronomers — and experts know ‘precisely’ where it came from https://nypost.com/2023/10/21/8-billion-year-old-radio-signal-found-by-astronomers-with-experts-precisely-knowing-where-it-came-from/ Australian scientists detect most distant fast radio burst ever discovered https://www.sydney.edu.au/news-opinion/news/2023/10/20/australian-scientists-detect-most-distant-fast-radio-burst-ever-.html
A luminous fast radio burst that probes the Universe at redshift 1 https://www.science.org/doi/10.1126/science.adf2678

わずか数ミリ秒の「高速電波バースト」

電波望遠鏡
電波望遠鏡 / Credit:Canva

電波望遠鏡は、遠方の宇宙から放たれた電波を受信し、非常に遠くの天体を観測することができます。

例えば、はるか遠くに存在する銀河や他の天体は、持続的に一定の電波を放射しています。

そのため、その発生源にターゲットを定めて長期的に観測していくことで、詳細な情報を得ることができます。

しかし、これら電波望遠鏡は、時に数百ナノ秒~数ミリ秒というごく短い突発的な電磁波パルスを捉えることがあります。

これは「高速電波バースト(FRB:fast radio burst)」と呼ばれており、わずか数ミリ秒で太陽が3日間で放射するエネルギーを放出しています。

遥か遠くの宇宙から届く一瞬の電波信号
遥か遠くの宇宙から届く一瞬の電波信号 / Credit:Canva

もちろん、数十億光年という遠く離れた位置から届いているため、地球に届く電波強度は非常に小さいものとなっています。

2007年に最初の高速電波バーストが発見されて以来、数多くの例が観測されており、宇宙では毎日何千回もの高速電波バーストが生じているとさえ言われています。

しかし、高速電波バーストは銀河や他の天体とは異なり、非常に短い時間でしか放射されないため、未だにその発生源や発生メカニズムについて完全には解明されていません。

そのため高速電波バーストの解明は、天文学者たちが抱える使命の1つだと言えます。

そしてこの度、前例のないほど強力な高速電波バーストの観測結果が報告されました。

次ページ80億光年の彼方から届いた「観測史上最遠」の高速電波バースト

<

1

2

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

宇宙のニュースspace news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!