真の正体は「歩く頭」⁈ ヒトデの腕は5つに分かれた頭だったと判明!
真の正体は「歩く頭」⁈ ヒトデの腕は5つに分かれた頭だったと判明! / Credit: canva
biology

ヒトデの腕は5つに分かれた頭だったと判明!

2023.11.03 Friday

もしヒトデに帽子を被せるとしたら、どこにしますか?

ヒトデの真ん中?それとも星形に伸びた5つの腕のどれか?

バカげた質問と思うかもしれませんが、生物学者にとっては実に深刻な問題となっています。

というのも人や犬、鳥などを見れば、どっちが頭でどっちがお尻かは一目瞭然ですが、ヒトデは5本の腕でどの方向にも進めるため、体の前と後ろが分からないのです。

中には「ヒトデには頭がなく、5本の腕だけで動いているのではないか」とする意見もありました。

しかし、どうやら真実は逆だったようです。

米スタンフォード大学(SU)の最新研究により、ヒトデの体のほぼすべては「頭部」に関連する遺伝子からなり、頭が5つに分かれた存在と言えることが判明しました。

雑に言うと、ヒトデは”歩く頭”だったのです。

研究の詳細は、2023年11月1日付で科学雑誌『Nature』に掲載されています。

Study reveals location of starfish’s head https://news.stanford.edu/2023/11/01/study-reveals-location-starfishs-head/ Long presumed to have no heads at all, starfish may be nothing but https://phys.org/news/2023-11-presumed-starfish.html Starfish Are Basically Bodiless Heads Crawling Around The Ocean, Scientists Say https://www.sciencealert.com/starfish-are-basically-bodiless-heads-crawling-around-the-ocean-scientists-say
Molecular evidence of anteroposterior patterning in adult echinoderms https://www.nature.com/articles/s41586-023-06669-2

謎すぎるヒトデの体

人を含む大半の動物の体は、体軸を中心線として鏡写しのようなシンメトリーになっており、これを「左右相称(bilateral)」と呼びます。

一方で、ヒトデの体はどうなっているでしょうか。

ヒトデはウニ・ナマコ・ウミユリなどと共に「棘皮(きょくひ)動物」というグループに属します。

ヒトデの幼生は、オスとメスの体外受精でできた受精卵から生まれ、1〜2カ月を海中で浮遊しながら過ごします。

実はこのときまではヒトデの体も左右相称になっていますが、海底に定着して成長する中で、ヒトデらしい星形に変わっていくのです。

幼生(左側)から星形に変態していく様子
幼生(左側)から星形に変態していく様子 / Credit: SU/Laurent Formery – Study reveals location of starfish’s head(2023)

このように左右相称ではなく、5つの同じ部位が中心から放射状に並んだ形を「五放射相称(pentaradial)」と呼びます。

ヒトデが「左右相称→五放射相称」に変わる仕組みはいまだ未解明であり、何世紀にもわたって生物学上の謎となっています。

それに付随して、5つの器官は「腕」という認識で合っているのか、また「頭」はどこに位置するのかもよく分かっていません。

一般の私たちの目から見ると、5つの突起があるのだから、1つが頭で、残りの4つは腕2本と足2本と理解すればいいのではないかという気もしてしまいますが、人での体は専門家も首をひねる不思議なものなのです。

そこで研究チームは今回、最新の科学技術を使って、ヒトデの遺伝子発現における3Dマップを作成し、腕や頭などの発生にかかわる遺伝子がヒトデの体のどこに位置するのかを調べました。

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