概日リズムは15℃の低温で止まり、35℃に温まるとリスタートすることが判明!
概日リズムは15℃の低温で止まり、35℃に温まるとリスタートすることが判明! / Credit: ExCELLS/NIPS(生理学研究所)(2023)
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概日リズムは15℃の低温で止まり、35℃に温まるとリスタートすることが判明!

2023.12.01 Friday

2023.11.27 Monday

概日リズムの秘密の一端が解き明かされました。

愛知の生命創成探究センター(ExCELLS)はこのほど、脳にある概日リズムが、約15℃の低温にさらされるとリズムを刻むのを停止し、約35℃まで温まるとリズムを再開させることを発見しました。

これは哺乳類の冬眠のような極端な低体温では、体内時計が一時的にストップし、冬眠が終わった後に新たな時刻からリスタートしていることを示唆しています。

いまだ謎の多い冬眠のメカニズムをひもとく鍵となるようです。

研究の詳細は、2023年11月3日付で科学雑誌『iScience』に掲載されています。

脳内の概日リズムの司令塔は低温で停止し、再加温により時刻がリセットして再開することを発見 https://www.excells.orion.ac.jp/news/9116
Cold-induced suspension and resetting of Ca2+ and transcriptional rhythms in the suprachiasmatic nucleus neurons https://www.cell.com/iscience/fulltext/S2589-0042(23)02467-7

概日リズムはどんな働きをしている?

地球上のあらゆる生物は、約24時間周期で時を刻む「概日リズム」を持っています。

概日リズムは「体内時計」とも呼ばれ、昼夜の明暗サイクルや温度を含む環境変化の予測特定の時刻に生理機能を最大化させるなど、心と体の健康にとって絶対に欠かせません。

私たち哺乳類において概日リズムを作り出しているのは「時計遺伝子」であると考えられています。

具体的には、細胞内にある時計遺伝子の発現と、その遺伝子から作られるタンパク質の合成および分解のサイクルによって概日リズムが生成されるという。

さらにその24時間周期のリズムを制御しているのは、の深部にある「視交叉上核(しこうさじょうかく)」という神経細胞の集団です。

これは睡眠覚醒サイクル体温リズムホルモン分泌など、全身のあらゆる生理機能の概日リズムを調節しています。

マウス脳の断面図(左)と視交叉上核の位置(右)
マウス脳の断面図(左)と視交叉上核の位置(右) / Credit: ExCELLS/NIPS(生理学研究所)(2023)

加えて、概日リズムは、自ら時を刻む「自律振動性」、周囲の環境に合わせる「同調性」、温度が変わってもリズム周期を変えない「温度補償性」の3つの重要な機能を持つとされています。

概日リズムは「冬眠中」でも動いたままなのか

私たち哺乳類は体温を常に一定に保つ「恒温動物」です。

だいたい37℃前後に維持し、わずか数℃の変化でも生理機能に支障が出るので、低体温が長く続くと細胞にダメージを負ってしまいます。

一方で食物が不足する真冬の季節には、クマやシマリスなど冬眠をする哺乳類がいます。

冬眠に入ると体の熱生産や代謝が抑制された状態となり、体温も環境温度の近くまで低下するのです。

冬眠中だと概日リズムはどうなっているのか?
冬眠中だと概日リズムはどうなっているのか? / Credit: canva

しかし研究者らはこれまで「体温が極端に低下した冬眠中の哺乳類において、概日リズムはそのまま時を刻んでいるのか、それともリズムが変わっているのか」という大きな疑問を抱いていました。

これは過去数十年にわたり研究されていますが、いまだ決着がついていません。

そこで研究チームは、概日リズムが時を刻む様子を温度を変えながら長期間にわたってリアルタイムに観察してみました。

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