世界最小の4細胞しかない多細胞生物「シアワセモ」
世界最小の4細胞しかない多細胞生物「シアワセモ」 / Credit:東京大学
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世界最小の多細胞生物!4つしか細胞がない「シアワセモ」

2023.12.08 Friday

地球上には数え切れないほどの生命形態が存在しますが、その中でもシアワセモ「Tetrabaena socialis」は特別な存在です。

わずか4細胞から成るこの生物は、世界で最も小さな多細胞生物として知られており、その可愛らしい外観も相まって、生命の不思議を教えてくれます。

しかし、この微小な生物の興味深い点は、そのサイズや外観だけに留まりません。

シアワセモが持つ多細胞生物としての性質は、生物学における根本的な疑問、特に生命がどのようにして多細胞化したかに対する理解を深める鍵を握っています。

シアワセモはいかにして多細胞生物の地位を勝ち取ったのでしょうか?

研究内容の詳細は『PLOS ONE』にて公開されています。

世界最小の多細胞生物の発掘 4細胞で2億年間ハッピーな生きた化石“しあわせ藻” https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/articles/a_00219.html
The Simplest Integrated Multicellular Organism Unveiled https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0081641

4細胞でも2億年間ハッピーな「しあわせ藻」

世界最小の4細胞しかない多細胞生物「シアワセモ」
世界最小の4細胞しかない多細胞生物「シアワセモ」 / Credit:東京大学 . 世界最小の多細胞生物の発掘 4細胞で2億年間ハッピーな生きた化石“しあわせ藻”

「シアワセモ(Tetrabaena socialis)」は、その名のとおり幸運の四葉のクローバー思わせる外見をしたユニークな存在です。

わずか4細胞から成るこの生物は、世界で最も小さな多細胞生物の一つとして知られています。

シアワセモたちは4個の細胞に生えた小さな鞭毛を使って遊泳することが可能であり、しばしばクルクルと回転しながら光合成を行っている様子が観察されています。

シアワセモがクルクルと踊る様子
シアワセモがクルクルと踊る様子 / Credit:Yoko Arakaki . The Simplest Integrated Multicellular Organism Unveiled . PLOS ONE (2013)

しかしシアワセモの興味深い点は見かけだけではありません。

これまでの研究で、最初の多細胞生物が誕生したのが10億年前、生命の多様化が進んだカンブリア爆発が起きたのが5億4000万年前であることが知られています。

しかしシアワセモが多細胞生命に進化したのは2億年前です。

2億年前と言えば、三畳紀からジュラ紀にあたり、この頃の地球は三畳紀末期の大量絶滅(T-J境界)を抜けて恐竜の巨大化が進んだ時期にあたります。

(※三畳紀末期には火山や隕石などの要因により全ての生物種の76%が絶滅しており、地球の歴史における5つの「大量絶滅」事件の1つにあたり、地質学的にはT-J境界を形成しています)

そんな時期にシアワセモたちはひっそりと、単細胞生物から多細胞生物への独自の進化を起こしていました。

つまりシアワセモは多細胞生物の界隈ではかなりの「新参者」にあたるわけです。

実際、シアワセモが属する緑藻の群体性ボルボックス目は単細胞生物から多細胞生物の中間段階にあたる種が多数存在しています。

そのためシアワセモは、生命が多細胞化するときに何が起こるかを研究する、絶好の生物となっています。

しかし生物学においては、細胞がくっついているだけでは多細胞化したとみなされません

いったい何を根拠にシアワセモは世界最小の多細胞生物の座を勝ち取ったのでしょうか?

次ページシアワセモの4細胞は単にくっついている以上の秘密がある

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