イルカは陸上時代の咀嚼筋を捨てて「高度な聴覚」を手に入れていた!
イルカは陸上時代の咀嚼筋を捨てて「高度な聴覚」を手に入れていた! / Credit: canva
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イルカは噛む筋肉を捨てることで超音波を感じる「メロン」を手に入れた!

2024.02.02 Friday

イルカが超音波を使って周囲を見ているというのは有名な話ですが、彼らはこの音を耳で聞いているわけではありません。

おでこにある「音響脂肪(メロン)」を通して内耳に音を伝えることで、超音波を感じ取ることができるのです。

北海道大学は新たな研究で、この音響脂肪がどのように進化したのかを調査。

その結果、イルカの音響脂肪は陸上時代にもっていた咀嚼筋などの頭部筋肉に由来することが判明しました。

どうやらイルカは餌を噛む能力を捨てる代わりに、超音波で周囲を感じ取る高度な能力を手に入れていたようです。

研究の詳細は2024年1月13日付で科学雑誌『Gene』に掲載されています。

イルカの音響脂肪はもともと筋肉だった~イルカは噛むことをやめることで、水中で高度にはたらく聴覚を進化させた~ https://www.hokudai.ac.jp/news/2024/01/post-1386.html
A tradeoff evolution between acoustic fat bodies and skull muscles in toothed whales https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0378111924000489

水中適応でイルカの身に起きた現象とは?

イルカを含む鯨類は今から約5000万年前に、陸上生活から水中生活へと移行し始めました。

現在ではイルカもクジラもすっかり水生動物となっており、陸上にいた時代の面影は見えません。

彼らは水中生活に適応するために新しい体の器官を進化させています。

例えば、四肢の代わりにヒレを、体毛の代わりに滑らかな皮膚を得たり、また水が口内に入り込む水中では餌をうまく噛めないため、丸呑みする能力を得ました。

このように新たに手にした形質を「新奇形質」といい、何かを失う代わりに別の新しい機能を獲得することを「トレードオフ進化」と呼びます。

目の後ろの方にあるイルカの耳の穴
目の後ろの方にあるイルカの耳の穴 / Credit: Texas Marine Mammal Stranding Network(facebook, 2021)

イルカの耳も同じです。

陸上時代の外に張り出た耳は水中生活に不向きなため、イルカはこれを捨てて小さな穴に変えました。そして鯨類のこの耳の穴は塞がっているため、ほとんど音が聞こえません。

そのためイルカは顔に届いた音を内耳に届けるため、頭部の中に「音響脂肪(メロン)」と呼ばれる組織を発達させたのです。

これは脂肪が筋肉よりも音波を伝えやすい性質があることを利用したものと見られます。

イルカが超音波を使って周囲の状況を感じ取っているのは有名ですが、こうした音波を感じ取れるのも音響脂肪によるものです。

イルカの音響脂肪(メロン)はおでこにある。
イルカの音響脂肪(メロン)はおでこにある。 / Credit:水産庁suisan 

では、イルカの音響脂肪はどこから進化したのでしょうか?

研究チームは今回の新たな調査で、その答えを見つけました。

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