Mercury
Mercury / credit: NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Carnegie Institution of Washington
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1日が1年より長い!『水星』ー月のような見た目の小さな惑星 (2/5)

2024.08.10 Saturday

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君は水星を見たことがあるか?

実は筆者は見たことがありません。地球から水星を見るのはとても難しいのです。ベテランのアマチュア天文学者(市民研究者)でも水星を見たことがない人は多いようです。

水星の観測が難しい理由

水星を見るのが難しい理由の1つは、水星が太陽に近すぎるからです。

地球軌道の内側を公転する惑星内惑星、外側を回る惑星を外惑星と呼びます。外惑星は、太陽と反対方向の位置になることがあり、深夜の夜空に輝くことがあります。それに対して内惑星は太陽の近傍から大きく離れることはありません。

最大離角
最大離角 / credit:国立天文台暦計算室

地球から見て内惑星が太陽から最も離れるタイミングを最大離角といいます。水星の場合最大離角のときでも太陽から28°程度しか離れません。そのため、日没直後の西の地平線あたりか、もしくは日の出直前の東の地平線近くにしか見えません。

また、水星は小さな惑星なので輝きが弱く、明け方や夕方の明るい空の中で見つけるのは難しいでしょう。

探査機による観測

地上からの観測が難しいので、惑星科学者は水星の謎の解明のために探査機を水星の近くに送り込んでいます。

実際に、1974年に水星に最接近した探査機マリナー10号によってはじめて水星の素顔が明らかになりました。2011年には探査機メッセンジャーが水星を周回する軌道に乗り、現在も観測を続けています。

メッセンジャー
メッセンジャー / Credit:NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Carnegie Institution of Washington

また、欧州宇宙機関(ESA)と日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の共同プロジェクトとして2018年10月に打ち上げられたベピ・コロンボ (BepiColombo) ミッションでは、水星磁気圏探査機「みお」と水星表面探査機MPOの2機の探査機が2025年12月に水星周回軌道へ投入される予定です。

しかしながら、水星は地球から近いにもかかわらず、水星探査ミッションはそこまでに多くありません。実績としてはマリナー10号とメッセンジャーだけなので非常に少ないのです。それは水星が探査機による探査も難しい惑星だからです。

水星に到達するには多くのエネルギーが必要です。水星は地球より太陽に近いので、地球の重力圏を脱出すれば、太陽からの引力を利用して加速できます。しかし、それだけだと加速しすぎて水星の軌道を通り過ぎてしまったり太陽に向かって落ちてしまいます。そうならないように適切にブレーキをかけたり方向転換したりする必要があるのです。

探査機の運動をコントロールするのにジェットエンジンを使った場合、大量の燃料が必要になります。現在では多くの探査機がスイングバイという方法を使って加速・減速や方向転換を行っています。スイングバイとは惑星の重力を利用して探査機の運動をコントロールする技術です。

ベピ・コロンボ ミッションでは水星周回軌道に入るまでに計9回もの惑星スイングバイを行います。これは史上最多記録です。

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