微生物を「パイロット」にしてマイクロマシンを操縦させることに成功!
微生物を「パイロット」にしてマイクロマシンを操縦させることに成功! / Credit: Haruka Oda et al., Small(2024)
robot

「東大が微生物たちの遊園地を開発!」でも実は奴隷船… (2/2)

2024.07.17 Wednesday

前ページマイクロマシンをどう動かせばいいのか?

<

1

2

>

パイロットに抜擢されたのは藻類の「クラミドモナス」

チームが今回、マイクロマシンのパイロットに抜擢したのは、緑藻の一種である「クラミドモナス(学名:Chlamydomonas reinhardtii)」です。

クラミドモナスは世界中の淡水域に広く分布しており、体長10マイクロメートル(μm)ながら一秒間に100マイクロメートルほどを移動する高い遊泳能力を持ちます。

彼らの泳ぎ方は、細胞の前方に付いた2本の鞭毛(べんもう)を使った方法です。

人間が両手でクロールをするときのように2本の鞭毛を使い、水を後方に押し出すことで推進力を得ています。

2本の鞭毛を使って泳ぐ
2本の鞭毛を使って泳ぐ / Credit: ja.wikipedia, canva/ナゾロジー編集部

加えて、複数匹が一緒になると、個々のサイズの5倍以上のマイクロマシンを引っ張るパワーもあります。

また重要なポイントとして、人間が食べてもまったく害はないことも指摘しておくべきでしょう。

(余談ですが、同じ微細藻類のユーグレナは健康食品としても注目されています)

ミドリムシを「かつお出汁」で培養すると赤色のミドリムシになる?!

チームは彼らをパイロットにすべく、クラミドモナスの体をしっかり固定しつつ、鞭毛の動きは阻害しないミクロのかごを作製しました。

かごの幅は幅50〜60マイクロメートル(※)で、先端にいくにつれて細くなっています。

(※ 人の毛髪の幅が約100マイクロメートルなので、その半分くらいの小ささ)

ミクロのかごにクラミドモナスが乗り込んだイメージと実際の様子がこちら。

左:イメージ図、右:顕微鏡で拡大した様子
左:イメージ図、右:顕微鏡で拡大した様子 / Credit: 東京大学 – 微生物によって動く小さなマシン~微細藻類によってマイクロマシンを駆動する方法を開発~(2024:PDF)

クラミドモナスは人為的にかごに入れられるのではなく、自然にかごに入るのを待ちます。

しかし後方へは進めないので、かごに入ったら自ら出ることはできません。

2種類のマイクロマシンを操縦させてみた!

チームは実験として、2種類のマイクロマシンを作製し、クラミドモナスに操縦させてみました。

1つ目は「スクーター(Scooter)」と呼ばれるマイクロマシンで、前方に2つのコックピット(かご)がついており、後方に四角い格子状の箱がついた逆三角形をしています。

2つ目は「ローテーター(Rotator)」と呼ばれるマイクロマシンで、十字の先端に計4つのコックピットがついており、観覧車のような形をしています。

こちらが両者のイメージ図。

左:スクーター、右:ローテーター
左:スクーター、右:ローテーター / Credit: Haruka Oda et al., Small(2024)

まずはスクーターにクラミドモナスを搭乗させてみたところ、動きこそしたものの、チームが期待したほど真っ直ぐには進まないことがわかりました。

おそらく2匹のパイロットの動きが協調しなかったことで、右へ行ったり左へ行ったりとぎこちない走行になったようです。

こちらが実際の映像。

進みはしたが、ぎこちない動きをするスクーター
進みはしたが、ぎこちない動きをするスクーター / Credit: Haruka Oda et al., Small(2024)

しかしながら、2つ目のローテーターは予想以上に見事な動きが確認できました。

すばやく動く観覧車のように、スムーズで調和の取れた回転運動に成功したのです。

ローテーターはあらぬ方向に大きくふらついたりすることもなく、平均20〜40マイクロメートル毎秒のスピードで安定して回転を続けたといいます。

こちらがその映像。

見事な回転運動を見せたローテーター
見事な回転運動を見せたローテーター / Credit: Haruka Oda et al., Small(2024)

これらの知見はどのようなマイクロマシンの形状やコックピットの配置、クラミドモナスの数であれば、スムーズな推進が可能になるかを模索する貴重なヒントとなります。

チームは現在、クラミドモナスの操縦するマイクロマシンをより速く、より正確に動かすための方法を研究しているとのこと。

また実用化のためには、パイロットたちがどのくらいの期間生存し、マイクロマシンの操縦を続けることが可能なのかも明らかにする必要があります。

しかし今回の研究で、微生物がマイクロマシンのパイロットとして十分な適性を備えていることが確かめられました。

未来のナノ医療では、この小さなパイロットたちが私たちの病気を治してくれるかもしれません。

<

1

2

>

コメントを書く

※コメントは管理者の確認後に表示されます。

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

ロボットのニュースrobot news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!