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ホホジロザメのサメ肌は「高速」「低速」どちらの泳ぎも安定させていた! (2/2)

2024.08.08 Thursday

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ホホジロザメの最適遊泳速度が判明!

本調査では国立博物館が所蔵するホホジロザメの全身ホルマリン漬け標本(全長3.16メートル、重量320キロ)を用いました。

チームは標本の全身にわたる17箇所から楯鱗サンプルを採取し、X線CTを使って3Dモデリングしています。

17箇所から楯鱗サンプルを採取
17箇所から楯鱗サンプルを採取 / Credit: 東京工業大学 – ホホジロザメの鱗の突起列は高速と低速の両方に適応(2024)

先ほど説明したように、ホホジロザメの楯鱗は大突起と小突起が前後に重なって列をなすように並んでいます。

このとき、隣り合う大突起と大突起の横幅(S2)は、大突起と小突起の横幅(S1)の約2倍になります(下図を参照)。

そしてチームは、隣り合う大突起同士がゆっくり泳ぐときの縦渦の摩擦抵抗を減らし、隣り合う大突起と小突起が高速で泳ぐときの縦渦の摩擦抵抗を減らすのではないか、というモデルを提案しました。

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Credit: 東京工業大学 – ホホジロザメの鱗の突起列は高速と低速の両方に適応(2024)

これらを踏まえて、それぞれの楯鱗の構造が最も水流の摩擦抵抗を低減できる「最適遊泳速度」を算出。

その結果、大突起同士の広い間隔の楯鱗(S2)は遊泳速度2〜3メートル毎秒に最適で、大突起と小突起の狭い間隔の楯鱗(S1)は遊泳速度5〜7メートル毎秒に最適であることが判明しました。

この数値は、最近記録された野生のホホジロザメにおける「長距離移動時のゆっくり遊泳」「瞬発的な最高速度」に一致する値だったとのこと。

この結果から、楯鱗の大突起は低速遊泳に、楯鱗の小突起は高速遊泳に、それぞれ適していることが示されました。

つまり、ホホジロザメのサメ肌は、ゆっくり泳ぎと高速泳ぎのどちらにも適した構造を持っていたのです。

古代の巨大ザメ「メガロドン」にも適用してみた!

またここで使用した計算手法を他種のサメにも用いれば、同じように最適遊泳速度を算出できるといいます。

そこでチームは、かつて地球に実在した史上最大のサメである「メガロドン」に適用してみました。

メガロドンは約360万〜2300万年前の間に存在した絶滅ザメの一種で、全長は10メートルを優に超えたとされています。

メガロドンの最適遊泳速度を試算
メガロドンの最適遊泳速度を試算 / Credit: canva

そしてチームはメガロドンの化石の文献から、推定全長を11.7メートル、楯鱗の大突起と小突起の間隔(S1)を100マイクロメートル、大突起と大突起の間隔(S2)を200マイクロメートルとして、最適遊泳速度を試算しました。

その結果、大突起同士の広い間隔の楯鱗は2.7メートル毎秒が最適で、大突起と小突起の狭い間隔の楯鱗は5.9メートル毎秒が最適と示唆されたのです。

これはメガロドンの全長がホホジロザメより4倍近くあるにも関わらず、遊泳速度には大して差がないことを意味するものでした。

サメの遊泳速度のデータ収集は非常に難しく、彼らの生態にはまだまだ未解明な点が多分に残されています。

チームは今回確立した計算方法により、現生のサメのみならず、化石しか残っていない古代ザメの遊泳速度も調べることで、サメの生態がどのように進化してきたかの理解を深めたいと話しています。

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