磁場が一方向にしか伝達しない「非相互的構造」を発見

technology 2018/12/03
Point
・2つの物体の間の磁場の伝達が一方向にしか起きない「磁気ダイオード」の開発に成功
・従来、磁場の伝達は双方向に行われる「相互性」を持つと考えられてきたが、一定の条件下では一方向にしか伝達されない「非相互性」が現れる
・この技術は、ワイヤレス充電器の効率性の向上など、さまざまな活用の可能性を秘めている

英サセックス大学の物理学者ジョルディ・プラットキャンプ氏は、独自の方法で磁場を操作する構造「磁気メタマテリアル」をつくる研究を行っています。

ここ数年でプラットキャンプ氏は同僚と共に、磁場から物体を見えなくする不可視化クロークや、空間の中の2点の間に目に見えないトンネルの磁場を生み出すワームホールといった、さまざまな装置を開発しました。

そして、プラットキャンプ氏の最新作が「磁気ダイオード」です。これは、2つの物体の間の磁場の一方通行の伝達を可能にする装置です。

Circumventing Magnetostatic Reciprocity: A Diode for Magnetic Fields
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.121.213903

銅線コイルを通して流れる電流は、コイルの中に磁場を生み出します。この磁場は、隣接するコイルなど、近くにある磁気を帯びた物体に伝達されます。電磁気の法則やこれまでに行われた実験が示すところによると、この伝達は対照的なものでした。つまり、磁場はコイルAからコイルBへ向かって伝達すると同時に、コイルBからコイルAへ向かっても伝達する「相互性」を持つと考えられてきたのです。

プラットキャンプ氏らは、この相互性のルールを打ち破り、磁場を一方向だけに伝達できないかと考え、一定の速度で回転する導電体を用いた実験を行いました。そして試行錯誤の末、中がU字型の空洞になった回転する導電体の円柱のそれぞれの表面の間に2つのコイルを配置することで、これが可能なことを明らかにしました。円柱が一定の速度で回転している時、磁場はコイルAからコイルBへ向かって伝達しても、コイルBからコイルAへ向かっては伝達しなかったのです。この磁気の「非対称性」・「非相互性」は、円柱が回転し続けるかぎり持続しました。これが「磁気ダイオード」です。

Credit: J. Prat-Camps et al., Phys. Rev. Lett. (2018)

連結磁気の仕組みは、電気自動車、変圧器、磁気メモリ、MRIといったさまざまな技術に使用されていますが、これらはどれも磁場が双方向に伝達するものです。「磁気ダイオード」のような新しい仕組みを持つ磁気ツールの有用性はさまざまな新しい可能性を広げるだろうと、プラットキャンプ氏は今回の発見の意義を語っています。たとえば、充電器から電子機器への電力伝達の流れを一方通行にし、電子機器から充電器への流れを断つことで、ワイヤレス充電器の効率性を上げることなどが可能です。

 

実用化が期待されますが、現時点では装置のサイズが大きく、日常での使用には適さないとのこと。プラットキャンプ氏らはこれからデザインの改良を進める予定です。

 

N極かS極だけの理論上の磁石「モノポール」の存在が「量子ガス」によって示される

 

via: physics.aps, uibk/ translated & text by まりえってぃ

 

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