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奴隷たちの思想をコントロールする「奴隷聖書」の展示が人気を集める。その巧みな思想統制法とは? (2/2)

2021.01.27 Wednesday

2019.01.07 Monday

前ページ「自由を求める心」を奮起させるものは容赦なくカット

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「支配者への服従」を促すものは強調。巧みな思想統制

こうした改訂を受けたことで「奴隷聖書」は極端に短くなっています。聖書の巻数は宗派によって異なり、プロテスタントは全66巻、カトリックは全73巻ですが、「奴隷聖書」はわずか14巻。

これは奴隷たちの識字率の低さを考慮した結果でもありますが、イギリスが自国に有益となるよう洗脳を試みたことが大きな理由です。

しかし、宣教師たちが行ったのは削除だけではありません。反対に、奴隷の献身的な服従を促すような箇所は抜粋して読ませました

例えば、エフェソの信徒への手紙の6章5節「僕たる者よ。キリストに従うように、恐れおののきつつ、真心をこめて、肉による主人に従いなさい 」といった文章です。

こうした緻密な編集作業を見るに、イギリスがいかに巧みに奴隷たちの思想統制をおこなっていたかがうかがえます。今日、現存している「奴隷聖書(Slave Bible)」のコピーは3部のみで、そのうち2部はイギリスに、1部がワシントンの博物館で去年から一般公開されています。

事細かにコラージュされた「奴隷聖書」の内容に来館者の人気は沸騰。現在では「奴隷聖書」を中心としたイベントがおこなわれています。

しかし、歴史的には「奴隷聖書」の操作によっても、奴隷たちの反乱を止めることはできませんでした。彼らはどんなに手ひどい仕打ちにもめげず戦いつづけ、ついには1834年に解放されます。人間の自由を求める力は、支配者の権力よりも強いことを見事に証明したのです。

reference: smithsonianmag ,essence / written by くらのすけ

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