AIが脳の信号を「言葉」に変換! 想像だけで会話ができる日がくる?

artificial-intelligence 2019/01/09

Point
■人の脳における電気信号をニューラル・ネットワークが再構築することで、その信号を直接「言葉」としてアウトプットできる可能性が示された
■これにより、話すことができなくなった人がよりスムーズに会話ができるようなインターフェイスが開発されるかもしれない
■ 収集されたデータは会話ができる人のものであり、話すことができなくなった人の「想像の言葉」を形にするにはまだ越えるべきハードルが多い

脳性麻痺を患った人や、話すことができない人の「言葉」は、脳のどこかに隠れています。当然ながらそのシグナルは、直接解読できるようなものではありません。

しかし、AIの力によってその解読が可能になるかもしれません。新たな研究により、脳に埋め込んだ電極から得られたデータをニューラル・ネットワークを介することで再構築し、人が分かる言葉へと変換できる可能性が示されました。

Towards reconstructing intelligible speech from the human auditory cortex

https://www.biorxiv.org/content/early/2018/10/10/350124

■データ収集は困難を極める

人は脳卒中などの病気で声を失った後でも、目線でスクリーン上の文字を指定するなど、様々な方法で他者とのコミュニケーションをはかることが可能です。

しかし、もし今回のインターフェイスが脳の信号を直接言葉へと変換できるとなれば、言葉に抑揚をつけたり、速い会話の中で口を挟むことだって可能になるかもしれません。

とはいえ、研究は一筋縄ではいきません。正確なデータをとるためには、頭蓋骨を開いて直接脳に電極を埋め込むことが必要になります。

しかし、実験目的のみで人に電極を挿すことは、倫理的に許されていません。データ取得のチャンスは、脳腫瘍の切除手術の際や、てんかん患者が手術前に問題の場所を特定するために電極を埋め込んでいるわずかな時間しかないのです

■成果を示した3つのテスト

実際、コロンビア大学の Nima Mesgarani 氏が率いるチームも、データの収集を5人のてんかん患者に依存しています。

彼らが用いたニューラル・ネットワークでは、発話と傾聴の両方でアクティブとなる「聴覚皮質」において、患者が数字や人の名前などを聞いているときの記録を分析。そのデータを再構築することで、75%という確率で「話す」ことに成功しています。

また、ブレーメン大学の Miguel Angrick 氏とマーストリヒト大学の Christian Herff 氏が率いたチームの研究では、脳腫瘍の手術中である6人の患者のデータが集められました。

電極は、声道への命令を送る脳のエリアについてのデータを記録、その後ニューラル・ネットワークが言葉を再構築しました。コンピューター・スコア・システムにおいて、それらの言葉のうちおよそ40%が人間にとって理解できるものであるとされました。

最後に、カリフォルニア大学の Edward Chang 氏率いるチームが3人のてんかん患者から得たデータから「文章」を再構築させています。

さらに、その正確性を試す166名が参加したオンラインテスト(10の選択肢から正しい1つを選ぶ)では、80%以上の正答率を叩き出した文章もいくつかありました。

■「想像の言葉」は形にできるのか?

しかし、これらのデータはすべて「話すことができる人」たちから収集されたものであり、本当に求められているのは「話すことができない人」の言葉を形にしてあげることです。

「想像している言葉」を解読することは難しく、この課題をクリアするための方法を見つけるためには大きなジャンプが必要となるでしょう。

1つのアプローチとしては、このインターフェイスを使用しながらフィードバックを続けるといった方法があります。つまり、使用者がリアルタイムでコンピューターの解釈を修正することでニューラル・ネットワークを訓練すれば、そのうち理想と現実が交わる地点に到達する可能性があるということです。

実用化に向けて越えるべきハードルはまだまだありそうですが、将来的に「想像した言葉」を話してくれる機械が誕生すれば、話すことができなくなった人々に会話の喜びを思い出させる「夢のデバイス」となることは間違いないでしょう。

脳がなくても「意識」は存在できるのか?

reference: sciencemag / written by なかしー

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