AIは「万能の神」にあらず。数学者が「AIに決して解けない問題」を考案

artificial-intelligence 2019/01/16

Point
■機械学習のアルゴリズムは、数学が本来備えている制約に縛られる
■機械学習は、アルゴリズムでは真偽が導き出せない「決定不能な問題」を孕んでいる
■機械学習はすべての問題を解決できる万能の技術ではないので、「健全な謙虚さ」をもって扱うことが重要

この世のすべての謎を解くことは不可能です。たしかに、AIがどんな難問も解決してくれるように思える現代では意外に思えるかもしれませんが、これは真実でしょう。

数学や人工知能を専門とする研究者の国際チームが、どんなに巧みに練られたアルゴリズムでも、数学が本来備えている制約に縛られることを明らかにしました。論文は1月7日付けで「Nature Machine Intelligence」に掲載されました。

すべてのAIは数学的制約を受ける

筆頭著者であるカナダ・ウォータールー大学のシャイ・ベン・デイビッド氏によると、数学は「すべての事象が証明可能というわけではない」という「殻」に閉じ込められている運命にあるそう。そして、AIや機械学習も同じ運命を共有しているというのです。

このこととよく結び付けられるのが、オーストリアの著名な数学者クルト・ゲーデルが1930年代に提唱した「不完全性定理」です。「数学は自己の矛盾性を証明できない」ことを示した彼の理論は、彼はすべての数学的問いが解決できるわけではないことを示唆しています。

ベン・デイビッド氏らは、機械の「学習力」も、証明不可能な数学の制限を受けると説明しています。つまり数学は、アルゴリズムでは真偽が導き出せない「決定不能な問題」を、AIに与えているということです。

最先端のコンピューターでさえ逃れられない

研究チームは、”estimating the maximum” (EMX) という機械学習の問題を調査しました。つまり、ウェブサイトにもっとも頻繁に訪れる人を標的にした広告を表示しようとしても、どんな訪問者が訪れるかをあらかじめ知ることはできないという問題です。

この場合、解かれるべき数学的問題は、「PAC学習(確率的近似的学習)」という機械学習の枠組みとの類似点を持つ一方で、「連続体仮説」という数学的パラドックスとも似ています。この仮説は、「不完全定理」と同様に証明不可能な数学に関係する仮説で、EMXのような状況においては、機械学習は少なくとも仮説上は、同じ壁にぶつかる可能性があるようです。

もちろん、EMXのケースのみから、機械学習が他の状況でも同種の問題に対処しなければならないと、単純に結論づけることはできません。とはいえこの新説は、最先端のコンピュータ科学でさえ、数学の奥深い本質を逃れることは不可能だということを、私たちに思い出させてくれます。

 

現在、機械学習は、数学の一分野として成熟を遂げ、証明不可能な課題に挑む分野にも取り込まれつつあります。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで社会に革命を起こし続けている機械学習のアルゴリズムですが、それがすべての問題を解決してくれる「万能の神」ではないことを、私たちはこの研究から学ぶことができます。「健全な謙虚さ」をもって、この便利な技術を活用することが大切なのです。

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reference: sciencealert / translated & text by まりえってぃ

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