音楽は世相を映す鏡。過去70年でヒット曲から楽しい歌詞が減少していることが判明

culture 2019/02/08

Point
■ヒット曲の歌詞が、過去約70年で徐々に悲しく、陰気で、怒りに満ちたものに変化している
■分析データの傾向は、社会における音楽の役割と結びついており、時代の世相を表している
■ヒット曲の歌詞には、その時代に起きた個々の出来事が反映されている可能性も

ファレル・ウィリアムズのヒット曲「ハッピー」の一節では、”Clap along if you feel like happiness is the truth”(一緒に手を叩こう その幸せに気づいてるなら)と歌われていますが、AIを使った調査では、ヒット曲の歌詞が過去約70年の間に、徐々に悲しく、陰気で怒りに満ちたものに変化していることが明らかになりました。

Quantitative Sentiment Analysis of Lyrics in Popular Music
http://jpms.ucpress.edu/content/30/4/161

米・ローレンス・テクノロジカル大学のコンピューター科学者リオール・シャミール氏は、IBM社の人工知能「ワトソン」を用いて、1951年から2016年にかけて米音楽チャート「ビルボードホット100」のランキングにノミネートされた6,000曲以上の歌詞を分析。「ワトソン」は、心理言語学と機械学習を組み合わせることで、歌詞の持つ情感を計測することができます。それぞれの曲に込められた「怒り・恐れ・嫌悪・喜び・悲しみ」を0〜1のスコアで数値化しました。

その結果、たとえば、ボニー・タイラーの1983年のヒット曲「愛のかげり」は、悲しみスコア0.52、恐れスコア0.53、喜びスコア0.09を獲得。また、ビレッジ・ピープルの「YMCA」は、喜びスコア0.65、怒りスコア0.11と評価されました。

また、全体で見ると、恐れ・怒り・嫌悪・悲しみの平均スコアが、1951年以降継続的に上昇しているのに対し、喜びスコアは徐々に低下していることが判明。1956年リリースのファッツ・ドミノの名曲”Blueberry Hill”の喜びスコアが0.89であるのに対し、サム・スミスの”Stay With Me”の喜びスコアはたったの0.15でした。

Credit: amazon.com

また、分析した曲の中でもっとも高い怒りスコアを獲得したバスタ・ライムズの”Touch It“は、怒りスコアは0.97。1980年代のヒット曲の中で、怒りの要素をもっとも含んだ曲の1つであるマドンナの”Borderline”の怒りスコア0.35に比べれば、とんでもない上昇です。「現代人の血圧、大丈夫?」と、心配になります…。

スコアの増減は世相を反映している

ビルボードホット100は、その年にもっとも人気が高かった曲だけを含むため、その曲の歌詞が持つトーンは、アーティストが表現したい感情というよりも、大衆が聴きたいと思う感情を反映します。分析データに見られた傾向は、社会における音楽の役割と結びついており、スコアの増減はその時代の世相を表していると、シャミール氏は説明しています。

1950年代における音楽の目的は、エンターテイメントや娯楽だったため、暗い曲よりも明るい曲が多かったのかもしれません。1960年代後半から1970年代初頭にかけて、社会的・政治的ツールの1つとなった音楽は、社会運動を促進したり、政治観を表現したりするのに利用されました。こうしたプロテスト・ソングの台頭が、ポピュラー音楽における怒りや嫌悪の要素を増幅させたのでしょう。

さらに、ヒット曲の歌詞には、その時代に起きた個々の出来事が反映されている可能性も。たとえば、1988年の恐れスコアの急低下は冷戦終結と、1998年〜1999年における恐れスコアの急上昇はミレニアム到来前の漠然とした不安感を表していると考えられます。

もちろん、音楽は歌詞だけではなく、メロディーや演奏方法からも成るため、この三者を同時に考慮されるべきだという懸念点は残ります。とはいえ、AIを使ったデータマイニングによって、音楽がまさに社会を映し出す鏡であることが分かったことは、とても興味深いですね。

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reference: sfgate / translated & text by まりえってぃ

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