テッポウエビが発するプラズマ衝撃波をヒントにした「ハサミ型ロボット」が開発される

technology 2019/04/19
Credit:sciencenews
Point
■テッポウエビのハサミをヒントに、水中でプラズマ衝撃波を生み出すロボットが発明される
■ハサミを勢いよく閉じることで生み出された気泡は、破裂時に1650度まで達する
■ハサミ型ロボットは、水中での岩石掘削作業だけでなく、水の浄化にも役立つことが期待される

未来のハサミ型ロボットが爆誕だ。

テキサスA&M大学の研究チームは先月、水中でプラズマ衝撃波を作り出すことのできるハサミ型ロボットの開発成功を発表した。

さらに性能を進化させれば、水の浄化や岩石の掘削作業への応用も期待できるそうだ。
研究の詳細は、3月15日付けで「Science Advances」にて掲載されている。

Bioinspired mechanical device generates plasma in water via cavitation
https://advances.sciencemag.org/content/5/3/eaau7765

ハサミからプラズマ衝撃波?小さな巨人「テッポウエビ」

「テッポウエビ」は体長5〜7cmほどの小さな生物だが、片方だけ大きくなったハサミには驚異的な力がある。そのハサミを勢いよく閉じることで、なんと強烈なプラズマ衝撃波を生むことができるのだ。

プラズマとは、気体の分子から電子が飛び出して、自由に動き回っている状態のことで、「物質の第4の状態」と呼ばれている。

しかし「エビからプラズマが」と言われてもさっぱりわからない。一体どのような仕組みでプラズマが発生するのだろうか。

ハサミは主に、上部「プランジャー」と下部「ソケット」から構成されている。このプランジャーを土台であるソケットに向けて叩きつけることで、気泡が作り出される。

Credit:techxplore

この気泡はすぐに破裂し、大きな音をともなってプラズマ衝撃波を発するという仕掛けらしい。しかも破裂時のプラズマは超高温で、なんと1650度を上回るそうだ。

テッポウエビはこの武器を用いて小さな魚を気絶させたり、サンゴ礁を砕いたりしている。まさに「小さな巨人」と言えるだろう。

3Dプリントでレプリカを作成

研究チームのデイビッド・スターク氏は「ハサミのメカニズムを応用すれば、効率的にプラズマ波を生み出せる機械が作れるのではないか」と考えたそう。

そこで研究チームは生きたテッポウエビから脱皮後に残ったハサミの殻を手に入れ、3Dプリント技術によりレプリカを作成。これをもとに頑丈なプラスチックのハサミを完成させた。

レプリカは、オリジナルの5倍までサイズ拡大されているが、ハサミを閉じるスピードは本物と変わらない。このレプリカを使った実験の過程でスターク氏は「ハサミがネズミ捕りのバネのような仕組みになっていることに気づいた」と話している。

Credit:techxplore

そこでネズミ捕りを応用して、ハサミの上部および下部の接合部分にバネ仕掛けの軸を組み込んだ。上部プランチャーは通常、開いた状態でロックされているが、バネを起動させると高速回転して閉じるようになっている。

このアイデアのおかげで、ハサミの間にあった水が勢いよく押し出されて気泡ができ、見事に破裂してプラズマ波を作ることに成功した。

効率の良いハサミ型ロボット

水中でプラズマ波を作り出す技術はレーザーや溶接機械ですでになされている。しかしそれらはすべて電力を利用するもので効率が良くないとのこと。

これに反して「ハサミ型ロボットは電力消費量、コンパクト性、低コストなどあらゆる面で効率性に優っている」とスターク氏は指摘する。さらに機械ならではのアップデートも随時可能なようだ。

例えば、テッポウエビのプランジャーは大きく膨らんだ形をしている。これはハサミを力強く閉じるために必要な筋肉が収納されているためである。しかしロボットなら、この筋肉部分を省いてもパフォーマンスを損なうことなく小型化することができるのだ。

Credit:youtube

こうした生物学的な必要性に縛られる心配がないのもロボットならではの強みだろう。

またハサミ型ロボットは岩石の掘削だけでなく、水の浄化作業にも役立つ。というのも、プラズマを利用することで水分子を分解し過酸化水素をつくりだすことができるのだ。この過酸化水素は水道水の殺菌には実に便利だ。

今後多方面での活躍が期待されている。

reference: sciencedailytechxplore, sciencenews / written & text by くらのすけ

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