粘菌の「記憶」の正体は塩分?
では、何が粘菌の記憶を形成しているのだろうか。フランスの”Centre de Recherches sur la Cognition Animale”の 研究者たちは、まず粘菌であるモジホコリを6日間、忌避物質である塩のある環境で育てて、習慣記憶を植え付けた。
次に、この粘菌の体内にどれほどの塩分が含まれているのかを調べたところ、学習していない粘菌に比べて10倍の濃度になっていることがわかった。
さらに学習した粘菌を塩分のない環境で2日間育てたところ、記憶はなくなり、同時に塩分濃度も下がっていた。塩分と記憶の関連性は確実だ。
次は記憶=塩という仮説の実証だ。記憶が形成されていないまっさらな粘菌に直接塩水を注射して、行動を調べてみた。すると2時間後には、まるで6日間学習した粘菌のように振る舞った。つまり、記憶の本体が物質そのものだったわけだ。
しかもこの記憶は結構長持ちする。粘菌は移動のできる変形体と、胞子を作る動かない子実体という2つの形態を持つ。変形体で形成された記憶と塩分濃度は、子実体を経ても数ヶ月単位で保存されていたという。
研究者たちの次の目的は、複数の忌避物質を同時に記憶できるか調べることだという。
私たちの考えるような「記憶」じゃない気もするけど、粘菌先輩スゴイ。