「脳は無菌」の常識が覆される? 「脳内細菌」を発見か

biology 2018/11/25
Credit: UAB Psychiatry / 右: 血管、左: 細菌
Point
・細菌がヒトの脳内に住んでいる可能性がある
・細菌は、海馬、前頭前野皮質、黒質などが集まる領域の血液脳関門の付近にある星状細胞の内部に集中して存在している
・腸内細菌が「間接的に」脳に働きかけている可能性は示唆されてきたが、脳内の細菌が「直接的に」脳に作用している可能性もある

「彼ら」が住んでいるのは、腸の中だけとは限りません。

アラバマ大学バーミンガム校の研究チームによって、細菌がヒトの脳の中に住んでいる可能性が明らかになりました。

死んだヒトの脳組織の断面画像から、細菌の姿を見つけました。発見は暫定的なもので、脳のサンプルが何らかの汚染物質で汚染していた可能性を完全に排除する必要があります。でも、もし真実であれば、この発見は脳に対する私たちの見方を180度変え、脳内の細菌は病気のサインだというこれまでの固定観念を覆すことになるでしょう。何かの悪さをすることもなく細菌が脳を住処としているとしたら、「脳は無菌だ」という従来の常識が反転することになります。

この驚くべき発見は、偶然もたらされました。研究チームはもともと、統合失調症を患う人とそうでない人との脳の違いを調べるため、「電子顕微鏡法」という、光の代わりに電子をあてて拡大する顕微鏡を用いて、34個のヒトの死後の脳の画像分析を行っていました。電子顕微鏡法は光の波長以下の対象物を捉え、細かい部分の撮影に適しています。画像を調べる中で、研究者らは不思議な棒状の物体を複数見つけました。本来の調査の目的とは違ったので最初は無視したのですが、最終的に調べたところこれらの物体が細菌だということが判明しました。

細菌は、34個すべての検体で見つかりました。そして驚くべきことに、観察した脳には、炎症や細菌性の病気の跡が一切見られなかったのです。

細菌は、海馬、前頭前野皮質、黒質などが集まる領域で集中的に見つかりました。また、その多くが、血液脳関門の付近にある星状細胞の内部に存在していました。血液脳関門とは血液と脳の組織液との間の物質交換を制限する機構のことです。さらに、これらの細菌の遺伝物質の配列を調べたところ、そのほとんどが、ファーミキューテス、プロテオバクテリア、バクテロイデスといった、ヒトの腸でよく見つかる細菌でした。

脳検体が汚染されていた可能性を取り除こうと、研究チームは、死後すぐに保存されたマウスの脳を分析しました。すると、ヒトの脳で見つかったのと類似した領域で、多くの細菌を発見。また、遺伝子操作により無菌状態にしたマウスの脳を分析したところ、これらの脳では細菌が見つかりませんでした。もちろん、これはあくまでもマウスの例であり、同様の結果がヒトでも再現される必要がありますが、それでも今回の発見は信憑性が高そうです。

腸内細菌が、脳に信号を伝える化学物質やタンパク質を生むなどして、「間接的に」脳に影響を与えることは、これまでも示唆されてきました。でも、今回の発見が本当だとしたら、細菌が「直接的に」脳に働きかけていることになります。「腸内細菌」ならぬ「脳内細菌」ですね。

今回の発見が証明されれば、脳内で細菌がどのような働きをしているのか、脳内に細菌が存在するのは普遍的なものなのか、腸と脳の相互作用において脳内の細菌がどんな役割を担っているのかといった数々の科学的な問いへの重要なヒントが得られる可能性があります。

 

「無菌」のはずの臓器に細菌が存在することは、脳に限ったことではありません。これまでも女性の卵管・卵巣や、男性の睾丸に、微生物叢が存在することが示唆されてきました。彼らは、文字どおり「何処にでも」住み着いて、私たちが想像もしないような役割を密かに担ってくれているのかもしれません。

 

人の脳にだけ存在する神経細胞を特定

 

via: livescience, zmescience/ translated & text by まりえってぃ

 

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