深海魚は真っ暗な海底でも「色が見える」スーパーアイを持っていた

animals_plants 2019/05/12
silver spinyfin / Credit: Pavel Riha/University of South Bohemia

Point

■深海魚が、暗い海底で発光生物が出すわずかな光を捕えるスーパービジョンを持つことが判明

■網膜にある桿体オプシンと呼ばれるタンパク質の遺伝子が極めて多いことが要因

■桿体細胞が層構造を持つことで、異なる波長の光子を多く感知できる

暗い洞窟の中に住む生き物たちの祖先は、進化の過程で目を実質的に失った。

ところが、太陽の光さえ届かない深海で暮らす深海魚は、発光生物が出すわずかな光を捕えられるスーパービジョンを進化させてきたようだ。

このことを明らかにしたのは、スイスのバーゼル大学で進化生物学を研究するウォルター・ザルツブルガー氏ら。論文が雑誌「Science」に掲載されている。

Vision using multiple distinct rod opsins in deep-sea fishes
https://science.sciencemag.org/content/364/6440/588

ザルツブルガー氏らによると、深海魚の「スーパービジョン」は、網膜にある桿体オプシンと呼ばれるタンパク質の遺伝子が極めて多いことに起因するとのこと。そのおかげで、異なる波長の光子を逃すことなくキャッチし、暗闇の中でも色がついた状態でものを見れるらしいのだ。

従来は、水深が深い場所で暮らす魚ほど視覚システムが単純になると考えられてきたが、この傾向が海底まで続くわけでは、どうやらないようだ。深海における光と生物進化の関係性は、想像以上に複雑なのかもしれない。

鍵はRH1遺伝子の数だった

水深1,000メートルは、太陽の光さえも到達することができない暗闇の世界だ。ところが、深海はエビ・タコ・微生物・魚が放つわずかな生物発光が満ちていることが、ここ15年ほどで徐々に明らかになってきた。

Credit: pixabay

脊椎動物でさえやっと見ることができるほどのかすかな輝きを、魚がどうやって知覚しているのかを探るため、ザルツブルガー氏らは101種の魚のオプシン遺伝子を調べた。

オプシンのアミノ酸配列は受容する光の波長によって変化するため、複数のオプシンがあることは色覚を可能にする。私たちヒトが暗闇の中でものを見ることができる(モノクロではあるが…)のは、桿体オプシンの一種であるRH1が、弱い光の下でよく働くからだ。

調査の結果、101種中ほとんどが1〜2個のRH1遺伝子を持つのに対し、4種はそれらとは一線を画していることが明らかになった。ハダカイワシと、ステューレポルス科の1種、それにナカムラギンメ科の2種が、少なくとも5つのRH1遺伝子を持ち、ナカムラギンメ科の1種silver spinyfinにいたってはなんと38個も持っていたのだ。脊椎動物では考えられないほどの数だ。

続いて研究チームは、11種の深海魚を含む36種の魚の遺伝子活動を計測。その結果、深海魚においては確かに複数のRH1遺伝子が活動していること、またsilver spinyfinの成魚では合計14個のRH1遺伝子が活動していることが分かった。

桿体細胞の層構造で多くの光子を波長ごとにキャッチ!

水深2,000メートルの海で暮らすsilver spinyfinの網膜は、桿体細胞のユニークな配列を持っている。暗闇の中に存在するわずかな光子を一番よく捕えられるように、桿体細胞が層を成しているのだ。

オプシンの感受性がもっとも高い波長は、そのアミノ酸配列から推測することが可能だ。silver spinyfinはRH1の機能を変化させる変異体を計24個持ち、それらを微調整しながら青や緑の波長を見ていることが分かった。これらは、生物発光の色だ。

複数のRH1遺伝子を持つことが分かった4種は、3つの部類に属している。このことは、スーパービジョンの能力が繰り返し進化してきたことを示唆している。

Credit: pixabay

また、オプシンの豊富さは、silver spinyfinの網膜の特殊な構造を説明するのにも役立つ。桿体細胞の中には通常よりずっと大きいものがあり、その多くはお互いに積み重なるかたちになっている。これにより、より多くの光子を感知できるのだ。

さらには桿体細胞の各層が、それぞれ異なる光の波長を捕えている可能性もある。そのおかげで、色の区別ができるというわけだ。

 

真っ黒なインクで染めたような海の奥底で深海魚が目にする微かな生物発光のきらめきは、海の外の明るい世界で私たちが目にしているものと同じくらい色鮮やかかつ変化に富むものなのかもしれない。

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reference: sciencemag / written by まりえってぃ

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