Point
■脳波を読み取り、自動的に聞きたい音を増幅させられる補聴器が開発された
■これまでの補聴器ではすべての音を拾ってしまうため、耳の不自由な人は特に騒がしい場所で会話に加わることに苦労してきた
■現在のバージョンでは、補聴器を脳に直接埋め込む必要があるため、実用化にはさらなるバージョンアップが必要となる
未来な補聴器の誕生だ。
装着者の脳波を読み取って、特定の音にだけにフォーカスすることができる補聴器が開発された。これにより、耳が不自由な人が騒がしい場所で受けるストレスが軽減できるかもしれない。
Speaker-independent auditory attention decoding without access to clean speech sources
カクテルパーティー効果を再現
人はあらゆる音の中から1つの音を聞き分け、脳内でその音量を増幅させる機能を持っている。驚くべきことにこのデバイスには、その機能が搭載されているのだ。
これまでに開発された最も高性能な補聴器であっても、すべての音を一気に拾うことしかできなかったため、装着者は特にざわついた場所では不協和音に耐えなければならなかった。
研究を率いたニューヨーク・コロンビア大学のNima Mesgarani氏は、「音を処理する脳のエリアは非常に敏感でパワフルです。そこでは自然に他の音の中から1つの音を増幅させており、この機能と比べると今日の補聴器の性能は劣っているといえます」と語っている。
そのため、これまで耳の不自由な人は会話に加わることが難しかった。特に、忙しく早口な会話が続く社会的なシチュエーションでは尚更だ。
よって、多くの音の中から自分が聞きたい音を無意識にピックアップする「カクテルパーティー効果」を、科学者は補聴器で再現することに挑戦し続けてきたのだ。