母親が子どもたちにサワガニ捕りを伝授
驚くべきは、それだけではない。
大人のメスとその子どもたちが、大人のオスたちよりも頻繁にかつ長時間にわたって、カニ捕りを行うことが分かったのだ。
クープス氏は、その要因をカニに含まれる栄養素(特に脂肪酸)が、母親と子どもの健康に特に重要である可能性を指摘しているが、詳細は明らかになっていない。
また、母親が子どもたちにカニを捕まえるテクニックを教えていることも分かった。小川は、生存に不可欠な食糧獲得の技術を次世代に伝授するための、命の教室でもあるのだ。
この発見は、チンパンジーにかぎらず、私たちヒトの進化についても重要なヒントを与えてくれそうだ。類人猿やヒトにとって、水中動物は長い時間をかけて重要な栄養源に変化してきた。
一説によると、水生動物の消費によって長鎖多価不飽和脂肪酸の摂取量が増えたことで、脳はより大きく、強力に進化してきた可能性もあるようだ。
この説はまだ仮説に過ぎないが、チンパンジーがカニを愛してやまないことだけは間違いないだろう。