記憶の遺伝は永続的ではない
実験ではメスのショウジョウバエとメスの蜂を、卵が収集される前の4日間に渡って共生させた。その後、ハエは卵のおよそ94%をエタノール臭のする食べ物の中に産み付けていることが判明している。
そして蜂の脅威にさらされた卵は、親のハエや蜂との接触を一切断って成虫まで育てられている。すると第一世代の子孫には親や蜂との接触がまったくなかったにも関わらず、エタノール食物の中に産卵する行動形態が遺伝していたのである。
驚くべきことにエタノール嗜好性は5世代にわたって受け継がれ、その後蜂にさらされる以前のレベルにまで徐々に戻っていった。これはつまりエタノール嗜好の遺伝が永続的なものではなく、むしろ危険性がなくなったら忘れ去られる可逆的なものであることを証明しているのだ。
ボズラー氏は「今回の発見がハエのみならず他の生物についても、遺伝形式が則っている根本メカニズムについて理解を深める一助となるかもしれない」と期待を寄せている。