10年先の死亡リスクが精度83%の血液検査で予想可能に

medical 2019/08/25
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Point

■44000人以上の血液検査のデータから、10年先までの長期的な期間で死亡率を知ることができる14の指標が同定された

■7600人以上の人々に対して、この14の指標を元に追試を行ったところ、10年間の死亡率を83%の精度で予測することができた

■この結果については、異なる研究所による再現性の確認や、異なる民族を対象とした検証が必要であり、今後の研究に期待がかかっている

うそ、私の中性脂肪高すぎ!

みたいな感じで、人間ドッグを受診した人の中には、医師から何らかの健康問題を忠告をされた人もいるかも知れません。

こうした血液検査のデータなどを元に、病気のリスクについて医師が指摘できるのは、全てそれぞれの指標と病気発症との関連性が研究によって証明されているためです。

しかし、短期的な病気リスクの予想を行うことはできても、5年から10年先となるような長期的な健康問題の予想は現在でも難しい問題です。

それは、血液データのどういった指標が、長期的な健康へのリスクに関連を持っているか、未だに明らかとなっていないためです。

こうした問題について、10年先までの死亡リスクと関連を持つと思われる血液データ中の14の指標を特定したという研究が発表されました。

この研究成果が、医療の現場に実装されれば、健康診断で血液を採取しただけで「あなた10年以内に死にますよ」と医師が指摘できるようになるかもしれません。

この研究に関する論文は、オランダ ライデン大学の研究者を筆頭としたチームより発表され、2019年8月20日付けで「Nature Communications」に掲載されています。

A metabolic profile of all-cause mortality risk identified in an observational study of 44,168 individuals
https://www.nature.com/articles/s41467-019-11311-9

血液から死亡リスクを予測する

こうした研究では、似たような健康状態、生活習慣などを持ち、対象とする病状を発症していない人々に対して、長期的な調査を行い問題の発生する要因の特定や発生率の比較を行っていきます。

具体的な例に上げると、「タバコの健康被害」に関する研究があります。

現在、タバコは癌の発症リスクを高めるとデカデカと箱に書いてあったりします。なぜメーカーは、こんな自社製品に不利となる文言を、箱に堂々と記載しているのでしょう?

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もともとタバコの健康被害は、因果関係が証明できないとして相手にされていませんでした。メーカーもこうした問題に取り合ってはいなかったのです。

しかし、ある研究成果があまりに明確にタバコの健康被害を指摘してしまったため、現在のような健康リスクの表記をせざる負えなくしてしまったのです。

タバコの健康リスクの証明には、3万人近い医師を対象とした調査が行われました。医師は基本的に自身の健康状態について正しく報告が行える上、健康に害となるような生活習慣はきちんと回避している人たちがほとんどです。

しかし、喫煙習慣を持つ人と持たない人はどちらも存在していました。これはタバコの影響調査に非常に都合の良い集団です。

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この数万人に及ぶ医師を対象にした調査を10年以上に渡って行った結果、喫煙習慣が健康問題の発症に有意な差を示し、遂にタバコメーカーは言い逃れすることができなくなってしまったのです。

こういった分析疫学の研究方法をコホート研究と言います。

今回の研究も、12の異なるコホート研究のために集められたデータを参考にしています。ここには実に44,168名もの人々の血液サンプルがあり、血液中の226の指標値が調査対象とされました

この研究対象者たちは後に、5,512人が死亡したのですが、その結果226の血液指標の内、14の指標が死亡率と関連していると同定されたのです。

ここで特定された14の指標が、実際死亡リスクの予測に対してどの程度有効であるかを評価するため、研究者たちは1997年に、新たに7600人以上のフィンランド人患者を対象に調査を行いました。

このコホート研究の対象者は、調査期間中に1,213人が死亡しましたが、調査対象となった14の血液指標は、約83%の精度で10年以内の患者の死亡を予測していました

これは従来の健康リスクの予測に比べて有意に精度の高い結果となりました。

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この結果から、研究対象となった14の血液指標は、10年以内の死亡リスクの予測を可能であることを示唆していると研究者は語っています。

しかし、様々な要因の絡む可能性がある血液指標による健康リスクの予測は、1回の調査だけで断定することは無理があると考えられています。今回の研究者たちも、この結果を元に、異なる研究機関が再現性の確認を行い、広くコンセンサスを得ることが必要だと考えています。

また、今回の研究はヨーロッパ系の人種のみが対象となって行われています。世界中の人々の健康リスクを予測するためには、様々な異なる人種を対象とした広範な調査が必要となるでしょう。

まだ、この血液検査によって長期的な死亡リスクを予測する研究は始まったばかりと言えるでしょう。けれど、長期的な健康の問題を早期に予測する方法が確立されれば、医師はより的確に患者のケアを行い健康な状態へ導くことが可能になります。

もちろん、みんながちゃんとお医者さんのアドバイスに素直に従うなら、という前提があるんですけど。

…そこは大丈夫ですよね?

血液中のがん細胞を見つけて「その場」で除去できるレーザー光線のテストに成功

reference:sciencealert,日本医師会/ written by KAIN

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