水に落ちたハチが「泳げる翼」を獲得するメカニズムが解明される

animals_plants 2019/11/24
Credit:California Institute of Technology
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  • カリフォルニア工科大学の研究により、ミツバチが水上を泳ぐときの翅のメカニズムが解明される
  • 翅の動きにより生じる波紋は、ハチの背後で大きく、前方で小さいことから、前進する推進力が生み出されている

時々、水面で翅をバタつかせているミツバチを見かけることがありませんか?

一見、溺れかかっているようにしか見えませんが、実はミツバチたちは岸を目指して冷静に泳いでいるのです。

カリフォルニア工科大学・はその結果、ミツバチが有する水泳能力のメカニズムが新たに解明されました。

ハチたちは、空中での飛翔と違って、水上だけの特殊な泳ぎ方を持っていたのです。

研究の詳細は、11月18日付けで「PNAS」に掲載されています。

Honeybees use their wings for water surface locomotion
https://www.pnas.org/content/early/2019/11/12/1908857116.short?rss=1

ハチ泳ぎのメカニズムを解明

研究のきっかけは、電子工学研究員のクリス・ロー氏がキャンパス内の池に囚われている1匹のミツバチを見つけ、その動きに興味を抱いたことでした。

そこでロー氏はミツバチをラボに持ち帰り、同様の環境を作って実験を行いました。

実験では、容器に水を張り、完全に静止した水面の状態を作って、そこに1匹のミツバチを浮かべます。1度に数分間、合計33匹のミツバチの動きを観察しました。

ハチは水に浸かると、翅に水が吸い付いて飛翔能力を奪われます。水は空気より重いので、翅の力だけでは直接空中に飛び立つことができません。

最初に観察されたのは、翅の動きによって波紋が作り出されることでした。それぞれの翅から生じる波はどちらも左右対称で、さらに互いの波がぶつかり合うことで新たな波が作り出されていました。まるで二重スリット実験のようです。

興味深いのは、強く大きな波はハチの「背後」に生じており、「前方」には波がほとんど見られないことでした。明らかにミツバチは、無我夢中で泳いでいるのではなく、前方に推進するための泳法を身につけているのです。

スローモーション映像で確認すると、翅は水面で上下に動くのではなく、水を後ろにかき出すように曲げられていることが分かりました。

また、水上での羽ばたきは空中よりゆっくりで、1回の翅の開きは10度以下に収まっています。空中を飛ぶときの開きが90〜120度であることを考えると、その差は歴然です。

さらに、ハチは泳ぐとき、翅の上部と先端は濡らさないようにして、底部と後部だけを使い、水を後ろに押し出すように動かしていました。もし翅がすべて水に浸かると、その重みで永遠に脱け出せなくなります。

ロー氏は「翅の底部に吸着した水の重みを逆に利用して、後ろに漕ぎだすように推進力を生み出している」と説明します。

しかし、翅の動きによる推進力は、1ニュートンの2000万分の1しかありません。手に持った中くらいのリンゴが、重力により手の平に与える力がおよそ1ニュートンなので、きわめて微々たる力であることが分かります。

ハチhこの小さな努力の積み重ねで、陸までたどり着くわけですが、水上での泳ぎは飛翔よりも労力を使うらしく、実験では最大でも10分ほどしか翅の動きは続きませんでした。

ただこうした水上での動きはハチだけに見られるもので、他の昆虫には今のところ観察されていません。このメカニズムは、陸海両方で飛翔可能なロボット開発への応用が期待されているようです。

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reference: phys.org/ / written by くらのすけ

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