- 観測値に設置して、カエルの鳴き声を遠隔で収集できる装置「FrogPhone(カエル電話)」が開発される
- 携帯電話の基本システムを模倣しており、遠隔から電話をかけることで、音声集音から気温・水温調査まで行う
生物の活発さは、その生態系の健康状態を示すマーカーとなります。
特に、カエルの鳴き声は健康指標として広く活用されており、フィールドワークに欠かせないツールです。
しかしながら、現場での音響モニタリングは、往復や調査にかかる時間やコストが高くつき、観測回数もかなり制限されます。これが遠隔地ともなると尚更です。
そこで、この問題を解決するため、オーストラリアのキャンベラ大学およびニューサウス・ウェールズ大学は、「FrogPhone(カエル電話)」と呼ばれる一風変わった観測装置を開発しました。
一体、どんなメリットを持っているのでしょうか。
研究の詳細は、12月4日付けで「Methods in Ecology and Evolution」に掲載されています。
https://besjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/2041-210X.13332
電話一本でデータ収集⁈
FrogPhoneは、世界初となるソーラーパワー式の遠隔観測器であり、電話一本で音響モニタリングを開始してくれます。
観測地に設置するだけで、あとは研究室にいながら、いつでも調査ができるというわけです。
FrogPhoneのシステムは、基本的に携帯電話に則っています。3G/4Gのネットワークに対応しており、電波到達範囲なら、利用者自身の電話を使って、どこからでもでコール可能です。
FrogPhoneは、コールから3秒後に着信を受け入れます。機能も豊富で、音声録音からビデオ通話、温度探知機による水温・気温の測定、データの送受信など、多岐にわたります。
コール後の3秒は、これらの機能を起動させ、モニタリングを開始するのに必要な時間です。
研究主任のエイドリアン・ガリド・サンチス氏は「高性能マイクを搭載したFrogPhoneは、設置場所から半径100〜150mにわたり、カエルの鳴き声をクリアに集音できます。
また、データ保存が可能なので、カエルの最も活発な夜間の鳴き声を自動で録音しておき、後からじっくりと分析することも可能になる。もちろんカエル以外の鳴き声も録音されるでしょう」と説明します。
3G/4Gでカバー仕切れないエリアにおいては、将来的に衛星通信と連携させることで利用できるそうです。
さらに、FrogPhoneは防水対応となっているため、草木の多い場所では、湖の中央に設置して、太陽光へのアクセスを最大化します。
研究チームのアンケ・マリア・ホーファー氏は「FrogPhoneを使えば、現地調査に伴うコストやリスクを大幅に削減することができます。こうしたメリットは、観測値への距離が遠隔になったり、アクセスが困難な場所ほど大きくなるでしょう」と指摘します。
FrogPhoneは、これから実用段階に入る予定とのことです。