肝臓の全機能をもった「ミニ肝臓」を3Dプリンタで作ることに成功

technology 2019/12/19
Credit:FAPESP
point
  • 新しい3D プリント技術により、本物と同じ機能をもつ肝臓を作り出すことに成功した
  • わずか90日間で、拒否反応ゼロの肝臓を作りだすことができる

臓器移植は深刻な病気を抱えている人たちにとって希望となってきました。しかし、ドナー待ちや拒絶反応の問題に悩まされてきたのも事実です。

最近になって、それらの問題すべてを解決するかもしれない驚くべき技術が発見されました。

サンパウロ大学が主催するヒトゲノム・幹細胞研究センター(HUG-CELL)は、3Dバイオプリンタ―により本物と同じ働きをするミニ肝臓を作ることに成功。拒否反応もないようです。

研究の詳細はIPO SCIENCE誌に11月27日に掲載されました。

3D bioprinting of liver spheroids derived from human induced pluripotent stem cells sustain liver function and viability in vitro
https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1758-5090/ab4a30

 

「臓器の機能維持」への挑戦

臓器内の全ての細胞を調べ上げる「全細胞解析」の三つのステップ / Credit: riken

以前からバイオプリンタ―技術による肝臓作成の研究は行われていましたが、作成した臓器の機能を保つことは出来ていませんでした。

臓器が機能を果たすためには、「細胞のグループ化」が必須です。個々の細胞がただ働いているだけでなく、互いに協力して働かなければいけません。

バイオプリンタ―で臓器を生成するということは、「個々の細胞をひとつずつ作り上げる」ということです。しかし、それだけでは臓器というよりも細胞の集まりです。それらの細胞をグループ化させてはじめて臓器として働き出すのです。

これまでの研究では、グループ化させ、実際に臓器として働き出すまでは成功していました。しかし、グループ化させた細胞たちは、次第に細胞間のコネクションが失われていき、臓器としての機能を維持することができていませんでした。個々に作った細胞はやはり個々なのです。

通常、バイオプリンタ―で肝臓を作り出すには、分化、プリント、成熟という3段階のプロセスがあります。長時間かけて実験を続けても、成熟段階における機能維持に失敗し続けてきたのです。

革新的な3Dプリンタ―技術の発見

Credit:depositphotos

数多くの研究を重ねる中で、研究者たちは細胞培養などのバイオエンジニアリング技術と3Dバイオプリンティング技術を組み合わせることにより、新しい方法で肝臓を作り出すことに成功しました。

新しい方法では、細胞をプリントする前からグループ化することができます。これにより、生成後もグループ化が消滅せず、肝機能を長く維持することが可能になったのです。

作成されたミニ肝臓は本物の肝臓と同じ機能を備えていました。タンパク質の生成、ビタミンの保存、胆汁の分泌などの機能を維持できたのです。

この方法で作られた臓器には大きなメリットがあります。患者自身の細胞を使用するので拒絶反応ゼロですし、わずか90日間で作り上げることができます。

もちろん、完全な臓器生成への応用も可能です。実際に、この研究に携わったグラールト氏は「私たちは小規模にこの研究を行ないましたが、投資があれば簡単にスケールアップできます」と述べています。

3Dプリンタ―で作られた臓器が、臓器移植の代替法となる日も近いのかもしれません。

血管付きの「生きた皮膚」を3Dプリントで作成成功

reference: agencia.fapesp/ written by ナゾロジー編集部

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