まるで人間のように「汗をかく」ロボットが開発される

technology 2020/01/31
Credit:Mishra et al
point
  • 新しく開発されたソフトロボットは「発汗システム」によって6倍速く冷却できる
  • 「発汗システム」が採用されたロボットアームは熱い物体を掴み、冷却させることができる

物体に触れずに「つかめる」ロボットアームが開発される

人間の身体に備わる優れた仕組みは、機械工学にも多大な進歩を促してきました。

その中でも、今回科学者たちが目をつけたのが生物特有の冷却機能である「発汗」です。

米国コーネル大学やFacebook Reality Labsによる研究チームは、人間のように「汗をかく」ロボットを開発。ロボットに比べて6倍速く冷却できるため、過熱を防ぎ、安定したパフォーマンスを維持できます。

また水圧によって、まるで指を操るように自在に動かすことも可能です。

研究の詳細は「Science Robotics」誌に掲載されました。

Autonomic perspiration in 3D-printed hydrogel actuators
https://robotics.sciencemag.org/content/5/38/eaaz3918

人間のように「汗をかく」ロボットとメリット

Credit:Mishra et al

自動車はエンジンによって長距離を走ることができますが、副産物として熱が発生します。それらの熱は誤作動や故障の原因となるため、自動車にはラジエーターと呼ばれる冷却装置が備わっています。

同様に、様々な機械・ロボットを動かす際も副産物として熱が生じるため、従来のロボットにはファンやラジエーターといった剛性の冷却装置が欠かせませんでした。

しかし、ソフトロボット工学が進歩するにつれて、新たな問題が発生しました。

医療や食品を扱う場合に、ゴム素材で作られたソフトロボットが用いられるようになりましたが、従来の剛性の冷却装置はソフトロボットとの互換性がありません。

ソフトロボットにも組み込める冷却システムの開発が必要になってきたのです。

そこで、科学者たちは人間の発汗システムを応用することで、ソフトロボットに組み込める冷却装置を開発。これが、人間のように汗をかくロボットというわけです。

発汗ロボットはヒドロゲル(水からなるゲル状素材)で作られています。発汗ロボットには汗腺が備わっており、温度が上昇することで穴が開きます。そこから汗(内部の水)が流れることにより、熱を放出します。

A:発汗ロボットアーム    B:発汗ロボットの温度変化 b1:風が当たる状況下でのアーム全体の温度変化  b2:風が当たる状況下でのロボット単体の温度変化  b3:風のない状況下でのロボット単体の温度変化    C:温度変化と時間のグラフ  ■:発汗なし、風なし ●:発汗なし、風あり □:発汗あり、風なし ○:発汗あり、風あり /Credit:Mishra et al

この発汗システムは非常に優れた冷却性能を示しており、通常下で、発汗システムのないロボットよりも2倍速く冷却できました。加えて、風が当たって熱を放出しやすい状況下では、その冷却機能は6倍にもなったとのこと。

また発汗ロボットは、従来の冷却装置にはできなかった「周囲の温度以下の冷却」も可能です。

発汗ロボットアームは熱い物体をつかむこともできる

発汗ロボットは冷却性能を備えているだけでなく、内部を流れる水の圧力によって、油圧式機械のように、物をつかむことができるようです。

研究者のウォリン氏によると、「この戦略の最良の部分は、熱規制性能が材料自体に基づいていることです」と述べています。

従来のロボットアームはアームに外部の冷却装置を取り付けなければいけませんでした。しかし、発汗ロボットはそれ自体がアームにもなりますし、冷却性能も備えているのです。まさしく「人間の手」のように多機能なのです。

A:お湯に浸かった空き缶  B:不規則で柔らかい物体  C:筒状の物体/Credit:Mishra et al

「発汗ロボットアーム」は熱い物体をつかむとき、特に効果的に働きます。加熱された物体をつかむと、ロボットアームから汗が流れます。ロボットアーム自体は発汗によって冷却されます。そして、つかまれた物体も冷却されたアームと指先から流れる汗(水)によって冷却されていきます。

このように、様々な機能を備えた発汗ロボットですが、現段階で実用には至っていません。今後、発汗によって失われる水の補充方法に焦点が当てられ、開発が進められていくでしょう。

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reference: dailymail,theverge / written by ナゾロジー編集部
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