- 新しく開発されたソフトロボットは「発汗システム」によって6倍速く冷却できる
- 「発汗システム」が採用されたロボットアームは熱い物体を掴み、冷却させることができる
人間の身体に備わる優れた仕組みは、機械工学にも多大な進歩を促してきました。
その中でも、今回科学者たちが目をつけたのが生物特有の冷却機能である「発汗」です。
米国コーネル大学やFacebook Reality Labsによる研究チームは、人間のように「汗をかく」ロボットを開発。ロボットに比べて6倍速く冷却できるため、過熱を防ぎ、安定したパフォーマンスを維持できます。
また水圧によって、まるで指を操るように自在に動かすことも可能です。
研究の詳細は「Science Robotics」誌に掲載されました。
Autonomic perspiration in 3D-printed hydrogel actuators
https://robotics.sciencemag.org/content/5/38/eaaz3918
人間のように「汗をかく」ロボットとメリット
自動車はエンジンによって長距離を走ることができますが、副産物として熱が発生します。それらの熱は誤作動や故障の原因となるため、自動車にはラジエーターと呼ばれる冷却装置が備わっています。
同様に、様々な機械・ロボットを動かす際も副産物として熱が生じるため、従来のロボットにはファンやラジエーターといった剛性の冷却装置が欠かせませんでした。
しかし、ソフトロボット工学が進歩するにつれて、新たな問題が発生しました。
医療や食品を扱う場合に、ゴム素材で作られたソフトロボットが用いられるようになりましたが、従来の剛性の冷却装置はソフトロボットとの互換性がありません。
ソフトロボットにも組み込める冷却システムの開発が必要になってきたのです。
そこで、科学者たちは人間の発汗システムを応用することで、ソフトロボットに組み込める冷却装置を開発。これが、人間のように汗をかくロボットというわけです。
発汗ロボットはヒドロゲル(水からなるゲル状素材)で作られています。発汗ロボットには汗腺が備わっており、温度が上昇することで穴が開きます。そこから汗(内部の水)が流れることにより、熱を放出します。
この発汗システムは非常に優れた冷却性能を示しており、通常下で、発汗システムのないロボットよりも2倍速く冷却できました。加えて、風が当たって熱を放出しやすい状況下では、その冷却機能は6倍にもなったとのこと。
また発汗ロボットは、従来の冷却装置にはできなかった「周囲の温度以下の冷却」も可能です。