ヒヒの母親は「子どもの死体」を10日間持ち歩くことがわかる

animals_plants 2020/03/12
子どもの亡骸を運ぶ母ヒヒ/ Credit: Alecia Carter, UCL
point
  • アフリカ南西部・ナミビア砂漠に住む「チャクマヒヒ」の母は、死んだわが子を最大10日にわたり持ち歩く
  • 同じ行動を取る他の霊長類よりも期間は短いが、それには過酷な砂漠の環境が関係していた

我が子を亡くなった悲しみの深さは、霊長類共通なのかもしれません。

野生のヒヒの母親が、死んだわが子の亡骸を最大10日間持ち歩くことが判明しました。

本研究は、野生のヒヒに関する最長の調査記録をもとにしており、アフリカ南西部・ナミビアのチャクマヒヒ(chacma baboon)を13年にわたって追跡しています。

その中で、流産・死産を含む12件の幼児の死亡例を確認され、その亡骸に対する母親の反応が詳細に記録されています。

UCL(ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン)、モンペリエ大学(仏)の共同研究の詳細は、3月11日付けで「Royal Society Open Science」に掲載されました。

Baboon thanatology: responses of filial and non-filial group members to infants’ corpses
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsos.192206

なぜ死んだ子どもを運ぶ?

観察の結果、ヒヒの母親が子どもの亡骸を運ぶ期間は、短くて1時間、長くて10日間つづき、平均で3〜4日と判明しています。亡骸を運んでいる間は、子どもの体を生前以上に頻繁に毛づくろいするようになっていました。

死んだわが子を持ち運ぶ明確な理由は不明ですが、研究主任のアリシア・カーター教授によると「いくつかの仮説が考えられる」とのことです。

1つ目は「グリーフ・マネジメント仮説(悲痛ケア)」で、これはわが子を失った喪失感に対する感情的な対処法を意味します。

2つ目は「ソーシャル・ボンド仮説(社会的絆)」で、ヒヒの母子は生前に強い絆を形成するのですが、それが子どもの死後も続くことを示します。

3つ目は「アンアウェアネス仮説(識別不能)」で、子どもが「死んだ状態」と「反応しないが生きている状態」とを見分けられないことを指します。

Credit: Alecia Carter, UCL

しかし、カーター教授は「母親が子どもの死に気づいていない可能性は限りなく低い」と話します。それは母親たちが、生前と異なる仕方で子どもに接するようになるからです。

先述した「毛づくろいの数が増える」こともそうですし、他にも子どもを片手だけで持ったり、地面を引きずるようにして運び始めることからも予想できます。

こうした行動は、生きている子どもには決してしない行為なのです。

酷暑の中でも…

亡骸を持ち歩く期間については、母親の年齢や幼児の死亡原因などが関係しますが、最も大きな原因は生息環境にあります。

実は、死んだわが子を持ち歩く習性は、他の霊長類にも確認されており、例えば、チンパンジーやマカクなどは1ヶ月以上も亡骸を持ち歩きます。

これに比べると、最長で10日しか運ばないヒヒが非情にも思えますが、そうではありません。

観察対象となったヒヒの母親/ Credit: Alecia Carter, UCL

というのも、チャクマヒヒが暮らすナミビア砂漠は、過酷な猛暑環境にあります。さらに、チャクマヒヒは、1日の平均的な移動距離が他の霊長類に比べはるかに多いため、亡骸を運ぶことが困難になるのです。

きっとヒヒの母親にとって、子どもの亡骸を置いていくのは苦渋の選択なのでしょう。

母から子への愛情は、ヒヒも人も変わらないようです。

ボノボの母親は息子の「お嫁さん」を探す手伝いをする

reference: phys.orgeurekalert / written by くらのすけ
あわせて読みたい

SHARE

TAG