日本最古の天文記録は『日本書紀』に記された扇形オーロラだった

geoscience 2020/03/17
画像はイメージ/Credit: depositphotos
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  • 720年に完成した『日本書紀』に、日本最古の天文記録が見られることが判明
  • それによると、当時の日本人は「赤い扇型オーロラ」を「雉の尾」に例えていた

日本最古の歴史書のひとつである『日本書紀』は、西暦720年の奈良時代に完成してから、今年でちょうど編纂1300年を迎えます。

この記念すべき年に、国立極地研究所および国文学研究資料館の研究チームは、「日本最古の天文記録が『日本書紀』に記されている」と発表しました。

原文中の「推古二十八年(620年)」の箇所に見られる「赤気」が、近年の天文研究で解明されてきた「扇型オーロラ」と合致するというのです。

論文は3月31日、「総研大文化科学研究 第16号(2020)」に掲載予定で、現在は国立極地研究所から詳細が確認できます。

雉尾攷―日本書紀にみる赤気に関する一考察
http://www.bunka.soken.ac.jp/journal_bunka/title_index.html

昔の日本では「赤いオーロラ」が見れた?

「推古二十八年(620年)」のくだりには、次のような記載が確認できます。

十二月の庚寅(かのえとら)の朔に、天に赤気有り。長さ一丈余なり。形雉尾に似れり。

該当の記述は右から5行目と6行目の頭まで / Credit: 国宝岩崎本「日本書紀」

一言で、「空に現れた赤気が雉の尾のようだった」と書かれています。「赤気」とは、当時の表現で「上空に現れる赤色の雲気」を意味する言葉です。

中国の歴史書には同年620年に出たオーロラの記述は無く、日本書紀では彗星は「箒星(ほうきぼし)」と記されていたため、オーロラなのか彗星なのか、科学的には謎めいた記述として知られてきました

しかし近年の古文書を踏まえた文理協同の天文研究では、低・中緯度の日本で観測されたオーロラは、赤色で扇型だったことが分かっており、原文中の「赤気」はオーロラを示すと思われます。

1770年に京都から見えたオーロラの絵/Credit: 松阪市所蔵の古典籍『星解』より

現在、日本でオーロラが見られるのは北海道くらいですが、当時の日本は、磁気緯度が現在より10度ほど高かったため、磁気嵐が起これば、都の方でオーロラが見えてもおかしくありません。

オーロラは「雉の尾」の形

また、注目したいのは「雉の尾に似ている」という表現です。

雉の尾羽はディスプレイ行動や母衣打ち(ほろうち)を見せる際、特徴的な扇型に変わります。

ディスプレイ行動とはオスがメスに対して尾羽をアピールする行動で、母衣打ちは、翼を激しく打ち立てて音を出す行動です。

ディスプレイ行動(左)と母衣打ち(右)/Credit:仲川弘道 氏 /  nipr

問題は、原文をよく見れば分かるように、正確には「雉尾(きじお)」ではなく「碓尾(うすお)」と記載されていることです。

しかし、この点については明治の研究者である飯田武郷により解答されており、飯田は「初期写本の多くに「似碓尾」との記載が確認されており、これは「似雉尾」を誤写した結果だろう」と述べています。

以上をまとめると、当時の人々が、夜空に突如出現したオーロラを見て天の使いと考えられていた雉に例えたのだと推測できるでしょう。

同時代の中国ではオーロラを城や旗に例えて恐れていたのに対し、日本人は美しい動物に例えていたようで、国ごとの文化的な感性の違いが見られます。今回のような研究は天文分野だけでなく、今後の人文学的研究の一助にもなるでしょう。

アッシリアの占星術レポートから最古のオーロラ現象の記録が発見される

reference: 国立極地研究所 / written by くらのすけ
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