VLBIは「距離」と「ダスト」を克服する
天の川銀河の正確な地図を作るには、「距離」と「ダスト」という障害を克服しなければいけません。
そのために採用されたのが「電波」です。光がダストに遮られるのに対し、電波はダストを容易に通過できます。
「超長基線電波干渉法(VLBI:Very Long Baseline Interferometry)」と呼ばれる電波天文学の手法により、「ダスト」の障害をクリアしました。
残る障害は「距離」ですが、こちらもVLBIによって、克服できます。
そもそも、「VLBI観測」は遠く離れた位置にある映像を取得するために採用されています。
遠くの星を鮮明に観測したい場合は、大きな望遠鏡が必要になりますね。
では、銀河系規模の距離を高解像度で観測するためには、どれほどの大きさの望遠鏡が必要でしょうか?
もちろん、そんな望遠鏡は作れません。
ここで、活躍するのが「VLBI」です。VLBIは複数のアンテナと原子時計を使って、それぞれの電波受信時間の差を測り、そこから高解像度の映像を取得できます。
VLBIを活用すると、アンテナ間の距離と同じ大きさ(口径)の望遠鏡を使った結果を出せます。
つまり、アンテナ間の距離が100mであれば、100m口径の望遠鏡を使ったのと同じくらいの性能を出せるのです。
そして、研究者たちは、天の川銀河を取得するために、2つのプロジェクトを立てました。
1つのプロジェクトでは、日本の端から端へ合計4か所に電波望遠鏡を設置しました。つまり、日本列島ほどの口径の疑似望遠鏡で観測しているのです。
もう1つは、10個の電波望遠鏡を地球の西半球の大部分に分散して設置しました。望遠鏡は地球の直径だけ離れているため、約13,000km口径の疑似望遠鏡で観測していることになります。
高解像度の望遠鏡ができたなら、続いては正確な距離測定です。
距離測定には、「三角測量」と呼ばれる測量方法を活用します。
地球は太陽の周りを公転しているため、季節によって、対象の天体が見える位置が異なります。この差を正確に測ることで、天体までの距離を求めることができるのです。
三角測量は測量士が都市のマッピングの際に利用している技術ですが、これをVLBIの高解像度疑似望遠鏡を活用して、宇宙規模で行ないます。
VLBIによって「距離」と「ダスト」の問題が解決され、天の川銀河の正確なマッピングに近づいたことが分かります。