天の川銀河の「新しい地図」
VLBIの度重なる測定によって、天の川銀河の地図は新しくなりました。
まず、当初の予想どおり、天の川銀河の中央にはバーがあることが判明しています。
そして、中央からは適度な対称性を持つ4本の渦状腕が渦巻いています。
さらに新しい地図は、太陽系が属するローカル腕と呼ばれる「5番目の短い渦状腕」についても明らかにしています。
このローカル腕は、これまで、他の渦状腕の付属品だと考えられていました。
しかし、リード氏らのデータによると、付属品ではなく「独立した渦状腕」だと考えられるようです。
また、ローカル腕は短いものの、近くのベルセウス腕と同程度量の星形成(星間物質から星がつくられる現象)を持っていることが判明しています。
さらに、新しい地図では太陽系の位置の最新情報も掲載されています。
数十年前までは、太陽から天の川銀河の中心までは27,700光年だと考えられていました。新しい地図ではそれも更新され、26,600光年となっています。
また、天の川銀河は236km/sで回転しているとのこと。これは、地球が太陽を周回する約8倍の速度です。
これらの数値からすると、太陽系が天の川銀河を2億1200万年ごとに1周していることになります。
加えて、天の川銀河の中心部分は非常に薄く、ほぼ平面形状になっています。
最近、天文学者たちは、太陽系の位置がこの平面に対して82光年の高さにあるとの考えで落ち着きました。
しかし、リード氏らによる新しい地図では、平面に対して20光年の高さにあると考えられており、天の川銀河の平面形状の中心とあまり変わらない高さにあるとされています。
私たちの天の川銀河は他の渦巻銀河よりも際立った存在のようです。
なぜなら、渦巻銀河の3分の2は中央にバーをもっていますが、天の川銀河のようにかなり対照的な4本の渦巻を備えてはいないからです。
天の川銀河については、渦状腕の発生方法や年齢など、まだまだ判明していない部分も多くあります。
今後も、VLBIによって多くの観測が実行され、天の川銀河の地図はますます鮮明になっていくでしょう。