石炭紀の怪物「タリーモンスター」が脊椎動物だと判明! 決め手はケラチン

biology 2020/05/09
3億年まえの石炭紀に生きてきたタリーモンスターは現存する生命とは似つかない形状をしている/Credit:nature
point
  • タリーモンスターは脊椎動物とする説があった
  • 今回タリーモンスターの化石から、脊椎動物に関連するキチンを検出
  • タリーモンスターが脊椎動物である場合、ヤツメウナギの仲間である可能性が高い

突き出た目とマジックハンドのような突き出た口……。

上の図の生物は、3億年前の石炭紀の海に生きていた「タリーモンスター」と呼ばれる生物です。

この奇妙な生物は非常に謎が多く、1958年に化石が発見されてから現在に至るまで、脊椎動物か無脊椎動物であるかもわかっていません。

2016年にはアメリカのイエール大学の研究者が数千もの化石を解剖学的に調べて、タリーモンスターには脊椎動物のような臓器を持っていると結論付けましたが、直接的な証拠とは言えませんでした。

そこで今回、ウィスコンシン大学の研究者らは論争に決着をつけるべく、化石に残された化学成分の分析を行うことにしました。

化学成分による分析は解剖学的な分析にくらべて、より直接的な証拠となります。

分析を行った結果、タリーモンスターは脊椎動物的な化学成分を持っていたことがわかりました。

今回の成果はタリーモンスターの正体を巡る論争に大きな方向性を与えると考えられます。

しかし、いったいどんな化学成分が決め手となったのでしょうか?

その答えは意外にも、3億年後の世界に生きる私たちにとっても馴染み深い成分でした。

キチン(多糖類)とケラチン(タンパク質)

左はカニの甲羅。右は人間の爪とネコの爪/Credit:sangakukan.depositphotos

タリーモンスターの分類の鍵となった成分はキチンとケラチンです。

キチンは昆虫のツノやカニの殻など、主に無脊椎動物の硬い部分に存在する成分であり、もう一方のケラチンは人間の爪や髪、ウロコやクチバシといった、主に脊椎動物の硬い部分に存在する成分です。

どちらも同じような役割を生命に提供していますが、キチンは多糖類である一方で、ケラチンはタンパク質の一種であり、両者の分子構造は大きく異なります。

そのため化石にキチン(多糖)由来の化石成分が含まれていれば、タリーモンスターは無脊椎動物であり、ケラチン(タンパク質)由来の化石成分が含まれていれば、脊椎動物である直接的な証拠になりえます。

分析にあたっては顕微ラマン分光装置が使われました。

顕微ラマン分光装置は、対象にレーザーを照射して散乱光を検出する顕微鏡的な性質と、散乱光のパターンから対象の化学結合の種類や結晶格子の歪みを直接検知する検知器の機能が合わさっています。

分析を行った結果、化石から検出されたのは、多糖ではなくタンパク質由来の化石成分でした。

このことから、タリーモンスターはキチンは含まれず、ケラチンを有する脊椎動物の仲間だと結論付けられました。

脊椎動物はアゴより先に脊椎を獲得していた

円口類は魚類ですらない異質で原始的な脊椎動物/Credit:nature

別の研究では、タリーモンスターが脊椎動物である場合、現存する種のなかで一番近いものは、ヤツメウナギ目の生物であるとの研究結果も出ています。

ヤツメウナギが属する円口類は狭義の魚類からも外れた存在であり(ウナギは魚類)、魚類・両生類・ハ虫類・鳥類・哺乳類など他の脊椎動物が持つアゴが存在しない異質な存在です。

これは円口類が、脊椎動物がアゴを獲得するより前に別系統に分岐したことを意味します。

このことから、脊椎動物はアゴより先に脊椎を獲得していたことがわかります。

タリーモンスターの口が奇妙なのも、ヤツメウナギのように、アゴとは別系統の口を手に入れていたからかもしれません。

 

研究内容はアメリカ、ウィスコンシン大学のビクトリア・E・マッコイ氏らによってまとめられ、4月28日に学術雑誌「gebiology」に掲載されました。

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reference: phys / written by katsu
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