サーモンはナゼ海から川に戻ってこられるの? 「磁場」を察知して川の方向を理解していた

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credit: depositphotos

生物の不思議な能力の一つに「磁覚(磁気感覚)」があります。

磁覚とは、地磁気の強さや方向を知覚できる能力のことで、渡り鳥やサケがその代表です。

一方で、磁覚のメカニズムは、ほとんど知られていません。コンパスもGPSも持たない生物が、どのようにして磁覚を働かせているのでしょうか。

今回、オレゴン州立大学(米)の最新研究により、チヌークサーモンは、地磁気を知覚するための磁気レセプターを体内に持っていることが示唆されました。

いったいどのようなメカニズムなのでしょうか。

GPSなしで母川に帰れるサーモンたち

チヌークサーモンは、北太平洋を中心に分布するサケ属の一種です。

個体差はありますが、ふ化後1〜5年を海で過ごしたあと、産卵のため、長い時間をかけて生まれ故郷の川に帰ります。

このとき、母川への帰路を正確にたどる道具として使われるのが磁覚です。

チヌークサーモン/Credit: U.S. Geological Survey, ja.wikipedia

磁覚のメカニズムには、これまで2つの仮説が挙げられています。

1つは、地球の磁気によって誘発される化学反応を通じて、磁場を検出しているという説。もう1つは、チヌークサーモンの体内に磁気レセプターが存在するという説です。

中には「両方が混ざり合っている」という意見もありますが、問題は磁気レセプターの特定が困難だということでしょう。存在したとしても、極小でまばらにあると思われるため、ピンポイントでの特定はほぼ不可能です。

そこで研究チームは、チヌークサーモンに磁気パルスを当てることで、磁気レセプターの存在を間接的に調べる方法を採りました。

海中の磁気ルートが見えている?

研究チームは、複数のチヌークサーモンを用意し、磁気パルスに当てるグループと当てないグループに分けて比較しました。

実験は、母川の磁場を忠実に再現した「ローカル環境」と、ふ化後のサーモンが過ごす海洋を再現した「グローバル環境」とで行われています。

その結果、ローカル環境では、2グループともほぼ同じ振る舞いだったのですが、グローバル環境では、パルスを与えたサーモンは、与えなかった方とは異なり、互いにバラバラな方向に進みませんでした。

それぞれのサーモンの頭は互いに同じ方向を向いていたのです。

これは、海から母川に帰るための磁気ルートに反応しているものと思われます。

同チームのデビッド・ノーク氏は「チヌークサーモンにはおそらく、帰路の方向を示す手がかりとして磁気を感じるコンパス的能力と、広い海の中で自分のいる位置を正しく把握するマップ的能力の両方を持っている」と指摘します。

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そして研究チームは、チヌークサーモンの磁覚が、体内にある「磁鉄鉱」に関係していると推測します。磁鉄鉱は、磁性鉱物の一種で、これまで複数の魚や鳥の体内に発見されています

つまり、チヌークサーモンにとっては、体内の磁鉄鉱が磁気レセプターとして機能している可能性が高いのです。

ノーク氏は「私たちの知る限り、磁気パルスが生物の方位行動に影響することを実証した初めての研究でしょう」と述べています。

彼らの目には、人には見えない磁気ルートがはっきり映っているのかもしれません。

研究の詳細は、4月14日付けで「The Journal of Experimental Biology」に掲載されました。

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reference: sciencealert / written by くらのすけ
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