新型コロナウイルスの新しい抗体薬がラマから作成される

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Credit:depositphotos
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  • ラマからの抗体がつくられた
  • 抗体はウイルス外縁のスパイクに結合して感染をブロックする
  • 様々な抗体を作るには種の多様性が必要

用の新しい抗体薬がラマ(リャマ)から作られました。

この抗体は2つの異なる部品を合成して作られた合成抗体であり、ウイルスの外周に存在する突起部分(スパイク)に結合することで、ウイルスが細胞に付着するのを妨げ、感染力を奪います。

実験では、この抗体がヒトの培養細胞に注がれたウイルスの感染を、完全にブロックしたことが確認されています。

研究チームは次の段階として、実際に人間の体での効き目を確かめる臨床実験を準備しているとのこと。

抗体薬はウイルスの増殖を直接防ぐ働きがあり、ワクチンとは違って感染後にも治療薬として使うことが可能です。

なお、今回の研究成果は5月5日に学術雑誌「Cell」に正式に掲載されたのですが、研究者たちは先立って3月にプレリリースをオンラインで公開しており、事実上「最初の抗体薬の一つ」となったと述べています。

時間経過と共に抗体薬の開発競争は激化しているようです。

人間には作れないスマートなウイルス認識部位

Credit:ナゾロジー編集部

実験ではまずラマにSARSとMERSのワクチンを与えることからはじまりました。

はSARSとMERSの近縁であるために、に対しても効果のある抗体をラマが作ってくれると考えたからです。

研究者の予想は当たり、ラマが作った重鎖抗体はに対して高い効果がありました。

次に研究者はラマの抗体の先端部分の構造を解読して、先端部分だけのナノボディー(VHH-72)を作りました。

上の図のように、人間の抗体は2つの先端部分が合わさって一つの抗体を認識する必要がありますが、このラマの作る重鎖抗体の先端部分(ナノボディー)は、単独でもウイルスが認識可能です。

そのため、ナノボディーと他の抗体のパーツを組み合わせることで、あらゆる種に対しても効き目のある抗体を作ることが可能となります。

実験ではナノボディを人間の抗体のFc部分(根元の抗原提示部分)と結合させる合成抗体がつくられました。

この合成抗体はに結合して直接的に感染を妨害する以外にも、免疫システムを活性化させる働きが期待できます。

もしラマが絶滅していたらナノボディーも利用できなかった

ラマはナノボディーの元となる抗体を作れるが、ヒトやネズミやウサギはナノボディーを作れない/Credit:Masahitoyamagata, 脳科学辞典

今回の研究では、人間以外の動物の抗体特性が、人間にとっても役立つことが判明しました。

このことは、種の保護の重要性を教えてくれます。

というのも、もし単独でウイルス(抗原)を認識する鎖をつくれるラマなどの生物が絶滅していたら、このナノボディーからなる抗体は製造できなかったからです。

人類は数多くの種の絶滅を引き起こしていますが、種が一つ絶滅するたびに、有用な医療資源も失っています。

今後もし、過去に絶滅した動物の抗体だけが効くウイルスが現れたら取り返しがつかなくなります。

そうならないためにも、自然と動物を大切にしていきたいですね。

研究内容はテキサス大学のダニエル・ラップ氏らによってまとめられ、5月5日に学術雑誌「Cell」に掲載されました。

Structural Basis for Potent Neutralization of Betacoronaviruses by Single-Domain Camelid Antibodies
https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(20)30494-3

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reference: Cell ,  ScienceDaily / written by katsu
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