謎の高エネルギーニュートリノの発生源が1つ特定される!

space 2020/05/24
ロシアのRATAN-600電波望遠鏡がニュートリノ発生源を観測しているイメージイラスト。/Credit: Daria Sokol/MIPT Press Office
point
  • 200兆eVの高エネルギーニュートリノが観測されているが、発生源はこれまで不明だった
  • ロシアの研究者は、電波望遠鏡の観測記録と比較しこれがクエーサーの電波フレアと特定
  • これまではガンマ線と共に発生していると考えられていたが、その常識は塗り替えられた

ニュートリノは幽霊のようにとらえどころのない素粒子で、ほとんど物質と相互作用しません。

このため、高エネルギーニュートリノの観測では、それがどこからやってくるのか? ということが研究テーマの1つになっています。

中でも200兆eV(電子ボルト)以上の、超高エネルギーニュートリノの起源については謎に包まれていて、ガンマ線バーストやブレイザーが発生源と目されていますが、その全貌は明らかになってはいません

しかし、ロシアのモスクワ物理工科大学の博士課程学生である若手研究者Alexander Plavin氏は、これがクエーサーの電波フレアから来ているという研究を発表しました。

彼はまだ科学者キャリアのほんの入口の段階で、天文学の大きな成果を上げたようです。

高エネルギーニュートリノの検出

アイスキューブ・ニュートリノ観測所。/Credit:S. Lidstrom/NSF/icecube.wisc.edu

ニュートリノは太陽や超新星爆発の残骸から発生していて、地球へ届きます。

今この瞬間も、何兆個ものニュートリノが私たちの身体を突き抜けています。

日本にあるスーパーカミオカンデは、こうしたGeV(ギガ電子ボルト)領域までのニュートリノを検出しています。

しかし、これよりもっと高エネルギーのニュートリノを観測する施設が南極に存在しています。

それがアイスキューブ・ニュートリノ観測所です。この施設は南極の氷の中に5000個以上のセンサーを取り付けて、TeV(テラ電子ボルト)領域の高エネルギーで飛来するニュートリノの検出を行っています。

この施設は基本的北半球の空からやってくるニュートリノを検出しています。

ニュートリノは物質とほとんど相互作用しないため、惑星でもなんでもお構いなしに通り抜けてきます。

そのため、北半球の空からやってくるニュートリノは地球越しに南極で観測する方が、他の粒子と紛れず見つけやすくなるのです。

高エネルギーニュートリノは毎年僅かな数ですが地球にやってきます。これは太陽などが発生源のニュートリノとはまったく異なる発生源だと考えられています。

これまでの観測で、可能性が高いと目されていたのは、ちょうどニュートリノがやってくる方向に発見されていたブレイザーでした。

ブレイザーは、地球方向を向いたクエーサーのことです。これは宇宙で最も明るい天体であり、ときおり高エネルギーのガンマ線を放つ非常に激しい天体現象を起こしています。

分析したところフェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡の観測とニュートリノの検出が一致したため、これが原因ではないかと考えられていたのです。

また、これ以外にもガンマ線バーストなどの現象が発生源になるだろうと予想されていました。

意外な発生源

ブレイザーからの放射を観測するアイスキューブ観測所。/Credit:IceCube / NASA

今回研究チームが考えたのは、高エネルギーニュートリノがクエーサーの電波フレアから発生しているのではないか、という仮設でした。

クエーサーはガンマ線から電波波長まで様々な電磁波を放出する天体です。

この中でも電波はもっともエネルギーの低い電磁波放射です。そのため高エネルギーニュートリノの発生と関連付けて考える研究者はこれまでいませんでした。

高エネルギーニュートリノの発生源を調査する研究はこれまで、数々試されてきました。そこで、研究チームは型にはまらないアイデアを試してみようと今回の仮設を立てたのです。

これは非常に成功の見込みが低い調査でした。

しかし、長年の電波望遠鏡の観測データと、高エネルギーニュートリノの観測データは非常に高い関連性を見せたのです。

結果が良すぎて逆に不安になった研究チームは、ロシアのRATAN-600電波望遠鏡の1年間の観測データに基づいて、注意深くデータの再分析を行いました。

しかし、この結果も両者の観測データの関連性が偶然一致したという確率は、わずか0.2%であるという結果になったのです。

ロシアのRATAN-600電波望遠鏡。/Credit:Wkipedia Commons

クエーサーの中心は巨大なブラックホールで、そこでは吸い込んだ物質が作り出した降着円盤が擦れ合い、ときたま強力なジェット噴射を行います。

このとき電波のフレアも発生していて、今回の発見はこの現象と高エネルギーニュートリノを関連付けるものです。

ガンマ線の観測はそれ専用の望遠鏡を使わなければなりません。電波帯域の観測でも、高エネルギーニュートリノと関連づいた観測ができるという発見は興味深い成果でしょう。

高エネルギーニュートリノは1つの発生源を持つわけではありません。この研究は高エネルギーニュートリノの発生原因の1つを発見したに過ぎません。

また、なぜこのような結果になるかの論理的な説明はこれからの課題になるといいます。

しかし、若手研究者のかなり挑戦的な研究によって、これまで見落とされていた新しい発見が報告されるというのは、非常に面白い話です。

この研究は、ロシアのモスクワ物理工科大学の研究者Alexander Plavin氏を筆頭とした研究チームより発表され、論文は天文学に関する査読付き学術雑誌『The Astrophysical Journal』に5月12日付で掲載されています。

Observational Evidence for the Origin of High-energy Neutrinos in Parsec-scale Nuclei of Radio-bright Active Galaxies
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/ab86bd

なんで宇宙は反物質より物質のほうが多いの?9年のニュートリノ実験で検証

reference: MIPT,universetoday/ written by KAIN
あわせて読みたい

SHARE

TAG