悪夢を見るのは”脳の再生”が原因だと判明

science_technology 2020/06/09
Credit:depositphotos
point
  • 記憶を司る海馬では、大人でも少数ながら毎日神経細胞が再生されている
  • 新たな研究は動物実験で、睡眠中に新生ニューロンの活動を観察することに世界で初めて成功
  • 怖い体験で活動した新生ニューロンは、睡眠中に再活動していることを発見した

ヒトにとって恐ろしい病気の1つが、アルツハイマー病やパーキンソン病など脳に関する疾患です。

また年をとってくると脳卒中も怖い病気の1つです。

こうした疾患の恐ろしいところは脳の神経細胞が基本的に失われると二度と再生しないという特徴にあります。

ヒトの体内の細胞は、その多くが毎日再生しています。そのため普通のケガなら数日で治癒します。しかし、脳に関してはそれができないため、脳疾患の治癒を難しいものにしているのです。

しかし、最近の研究では、記憶に関わる海馬では成長期を過ぎた大人でも、ごく少数ながら神経細胞(ニューロン)が毎日再生していることがわかってきました。

この大人の脳内に残る僅かな再生能力をうまく利用できれば、失われたニューロンをもとに戻して、脳機能を回復させることができるかもしれません。

現在そうした研究が世界中で進められており、今回日本の筑波大学、東京大学などの医学チームが睡眠と脳再生の関係を調査した研究を発表しました。

それによると、どうも脳の再生には、恐怖の記憶、怖い夢が関係しているようなのです。

睡眠中の新生ニューロン

研究チームは、超小型の脳内視鏡(特殊な顕微鏡)を使って、睡眠中のマウスの脳内の様子を調査しました。

新生ニューロンが生じるのは記憶に深く関わる海馬です。

記憶の定着には睡眠が重要な役割を果たしていることが知られているため、睡眠中の活動が研究対象となったのです。

ここでは刺激としてわかりやすい、起きている間の恐怖体験が、その後の睡眠中の新生ニューロンの活動にどう影響するかが調べられました。

すると、恐怖体験をしたマウスは、その体験時に活動していた新生ニューロンと同じニューロンが睡眠中に活動しているということがわかったのです。

そこで、研究チームは光刺激によりピンポイントでニューロンの活動を制御する技術を開発し、新生ニューロンを活性化させたり、逆に活動を抑制させることで何が起きるか調べました。

すると、恐怖体験で活動した新生ニューロンを睡眠中に抑制したときに限って、マウスが恐怖記憶を忘れてしまうことがわかったのです。

研究に用いた実験手法と結果。Credit:Kumar et al.Neuron(2020),筑波大学

通常のマウスが、恐怖経験を記憶すると、次からは怯えたように行動するのに対して、睡眠中に、新生ニューロンを抑制されたマウスは、恐怖の記憶を忘れてしまったように振る舞ったのです。

さらに解析した結果、こうした機能は、新生ニューロンの中でも特定の成長段階にあるものに限られていました。

生まれた直後や、成長しきった新生ニューロンでは、同じ現象は確認できなかったのです。

怖い記憶が定着する原理

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以上の結果から大人の脳内では、成長中の新生ニューロンが睡眠中に恐怖記憶を定着させているようなのです。

睡眠中は夢を見ている状態のため、このとき生き物は怖い夢を見ている可能性が高いでしょう。

この報告は記憶の定着方法や、脳の再生能力を高めるための方法を解明するために活かされるかもしれません。

これらの研究が進めば、トラウマやPTSDのような恐怖記憶に異常をきたす疾患の治療にも応用できる他、アルツハイマー病など、神経細胞の失われる病気の治療にも役立つ知見が提供できると期待されています。

脳の疾患で記憶が失われていく恐怖をなくしてくれる上に、怖い記憶もなくしてくれるかもしれないこの研究には、ぜひとも期待したいですね。

この研究は、筑波大学、東京大学などの医学研究チームより発表され、論文は脳神経科学などを扱う科学雑誌『Neuron』に6月4日付けで掲載されています。

Sparse Activity of Hippocampal Adult-Born Neurons during REM Sleep Is Necessary for Memory Consolidation
https://doi.org/10.1016/j.neuron.2020.05.008

悪夢を見ない方法が研究で判明!鍵は「二度寝」

reference: 筑波大学 / written by KAIN
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