葉緑体が緑色である理由が解明される! 光合成には最適な色の光があると判明

animals_plants 2020/06/27
緑の光は晴れの日に最も強く降り注ぐ光なのに植物は使うのを避けている。なぜ?/Credit:depositphotos
point
  • 晴れの日に最も強く降り注ぐ光の波長は緑の光なのに植物は使っていない
  • 最も強い光を使わないのは植物だけでなく他の光合成生物も同じである
  • 能動的にエサを食べられない植物は取り込む光を選択してダイエットを行っている

私たちにとって身近な植物が行っている光合成は、実は大きな謎につつまれています。

多くの植物の葉が緑色をしているのは、光合成にとって不要な緑色の光を反射しているからだと考えられていました。

しかし、2016年に日本の筑波大学の研究者らによって、晴れの日に最も強く降り注ぐ光が「緑色の光」(波長域550nm)であることが示され、大きな謎が浮かびました。

すなわち「なぜ植物は最も強く注がれる光を拒否(反射)するのか?」という疑問です。

カルフォルニア大学の研究者、トレバーB.アルプ氏はこの疑問を突き止めるために、植物以外の光合成生物が好む光を調べてみました。

すると、驚きの事実が判明します。

異なる環境(海など)に住む光合成生物たちも、それぞれの環境に最も強く降り注ぐ光を避けた光で光合成をしていたのです。

強く降り注ぐ光を吸収したほうが効率がいいように考えられますが、なぜ植物は強い光を割けているのでしょうか?

光合成は最も強い光を使わない

光合成生物はそれぞれの環境で利用できる最も強い光を避けて光合成している/Credit:Science

日本の研究にヒントを得たアルプ氏は、陸上の緑色植物以外の光合成生物が、光合成に使っている色を調べました。

結果、上の図のように最も強い光を吸収していないことが分かりました(灰色の線が降り注ぐ光の強さで、青線が吸収している光の強さ)。

植物は太陽の光から逃げることができないため、晴れの日には一日中降り注ぐ光を受け続けなければなりません。

動物で例えれば、閉じることのできない口に延々と食べ物を放り込まれるに等しい状態です。

そのため、最も強く注がれる光をあえてスルーすることで、食べ過ぎても不調に陥らないダイエット食のような光を吸収していたのです。

光合成のモデル化に成功

光合成のシステムを模したモデルは非常に高い精度で光合成の波長合成を再現した/Credit:Science

さらに、アルプ氏は光合成の謎を解き明かすために、上の図のような光合成の仕組みをモデル化した独自の装置を作りました。

装置は葉緑体内部で光を吸収する2種類のクロロフィルを代表する光合成アンテナと、運ばれるエネルギーが葉緑体内部を電子を受け渡しながら伝達するする仕組みを模したアンテナ群から成り立っています。

光合成アンテナに光があてられると、装置の内部を中継して最終的に1つの信号に合成されます。

装置は極めてシンプルながら、アンテナの光吸収設定を現実の生物に即して変更することで、光合成における光の吸収から化学エネルギーへの変換までの過程を高い精度で再現できました(特に陸上の緑色植物の最限度は98%)。

グラフ中の灰色の線はそれぞれの生物がいる環境に降り注ぐ光の波長ごとの強さを表す。今回の研究では陸上植物だけでなく他の光合成生物も、最も強い光とは別の波長の光を吸収していたことが判明した。いったい何故だろうか?/Credit:Science

結果、まず最初に2つの連続したピークの謎が解き明かされました。

2つの種類のクロロフィルがお互いの吸収する光の波長に適度な距離があるとき、光合成によるエネルギー生産が最も安定していたのです。

/Credit:Science

上の図のようにピークの間が短すぎるとき、外的な要因がない場合は常に中央の最適値とほぼ同じエネルギーが得られるのですが、外部的な光の増減(ゆらぎ)がある場合、適性値から遠ざかってしまいます。

逆にピークの間が長すぎても、エネルギー変動幅が増加して、やはり最適値かた離れてしまいました。

生物たちは長い時間をかけて、飲み込む光(の波長)の食べ合わせを調節して、出力されるノイズを減らした最適な吸収パターンを手に入れていたのです。

太陽電池も全ての光を利用する必要はない

Credit:depositphotos

今回の研究によって、光への過剰暴露を防ぐことが、光合成を成功させる原動力であることがわかりました。

生物は非常にシンプルな方法を使って、光吸収量を制御し、ノイズを減らして適切なエネルギーを生産しています。

現在行われている太陽光発電においても、出力を増すことと同じくらい、ノイズを減らすことは重要です。

そのため今回の研究を応用することで太陽光発電の性能を向上させることが可能になります。

研究内容はアメリカ、カリフォルニア大学のトレバーB.アルプ氏らによってまとめられ、6月26日に学術雑誌「Science」に掲載されました。

Quieting a noisy antenna reproduces photosynthetic light-harvesting spectra
https://science.sciencemag.org/content/368/6498/1490

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reference: sciencedaily / written by katsu
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