新素材は人工軟骨に必要な柔軟性と剛性を示す
人工軟骨に必要なのは弾力のあるクッション性能です。「伸び」や「圧縮」を受けても元の形状に戻ることが大切なのです。
この点、新しい素材に使用されている材料は相互作用によって強いクッション性を示してくれます。
材料が伸ばされると、③がゲル状を保とうとしてくれます。逆に押しつぶされるときには負の電荷を帯びた①と②が互いに反発して水に付着するため、元の形状に戻ろうとするのです。
この新しいハイドロゲルは「伸び」と「押しつぶし」において既存のハイドロゲルよりも優れた性能を示しました。
研究チームの一員であるデューク大学材料科学者のファイケン・ヤン氏は「この3つの成分の組み合わせだけが、柔軟性と剛性の両方を兼ね備えているため高い強度を示す」と述べています。
実際、「10万回の引張試験」をクリアし、この素材が人工骨に使用される多孔質チタンと同様の強度であることを示しました。
また、「人工軟骨ゲルを天然軟骨と擦り合わせる」試験では、100万回以上擦り合わせた結果、本物と同様の耐摩耗性が認められました。これは現在、外反母趾(親指の変形)手術に使用されている人工軟骨よりも耐久性が高いことを示しています。
このように人工軟骨ゲルは高い性能を示していますが、実際に人間の体への使用が承認されるには最長で3年かかると言われています。
現在、人工軟骨ゲルの非毒性は培養細胞でのみテストされており、次のステップでは、羊に安全に移植できるかを試す予定です。
人間への人工軟骨移植までの道のりは遠いですが、実現の可能性は十分あります。数年後には、人工軟骨ゲルによって関節機能を完全に回復できているかもしれません。
この研究は6月26日、「Advanced Functional Materials」に掲載されました。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/adfm.202003451
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