- 1万3000年前のマンモスの牙に「ラクダの争い」や「ラクダに変装した人」の彫刻絵が発見された
- 彫刻絵を描いたのは、同時期にシベリア西部に住んでいた遊牧民と思われる
シベリアで見つかった約1万3000年前のマンモスの牙に、不思議なラクダの彫刻絵が発見されました。
その中には「ラクダの争い」や「ラクダに変装した人」の画が見つかっています。
調査を行ったロシア・ハカシア研究所によると、「アジアで見つかった動物絵画の中では最古の作品」とのことです。
一体、誰が何のために描いたのでしょうか。
ラクダとともに生きたシベリアの遊牧民?
マンモスの牙は、1988年に、シベリア西部のトミ川下流で発見されたものです。しかし、今回に至るまで調査はされず、同国のトムスク大学に保管されていました。
牙の長さは150センチに達し、表面の劣化や剥離が進んでいるため、調査には慎重を要しています。
放射性炭素年代測定の結果、マンモスの牙とラクダの画はともに、95%の正確性で、1万3100〜1万3005年前のものと特定されました。
画は表面が婉曲して不安定な牙の上に鋭い刃物で彫られており、線も非常に細くて浅く、全体像を識別するのが困難だったそうです。
場所によっては、線の厚みが0.1〜0.15ミリの部分も見られています。
それでも、牙の拡大写真を撮るなどして、「ラクダの争い」と「ラクダに変装した人」の特定に成功しました。
研究主任のユーリー・エシン氏によると、「ラクダの争いは、毎年の発情シーズンに起こり、オスがメスをかけて闘います。当時の人々は、それを彫刻絵として残すことで、季節の目印にしていた可能性がある」と指摘します。
また、彫刻絵を描いた集団は、ラクダとともに暮らした遊牧民であったようです。
というのも、マンモスの牙が見つかったトミ川付近では、数百キロにわたってラクダの骨がいくつか出土しています。これは、人々がラクダを引き連れて移動していたことを示します。
「ラクダに変装した人」について、エシン氏は「狩猟民がラクダの格好をすることで獲物となる動物に近づきやすくなり、捕らえるか仕留めるかしたのではないか」と話します。
彫刻絵には、矢傷を受けたラクダも見つかっており、人々はラクダを家畜としてだけでなく、狩りの対象にもしていたのでしょう。
画を残した集団の正体は遊牧民という以外にほぼ分かっていません。
それでも「同時代にシベリア西部に移住したグループがいた」という先行研究が報告されており、同一集団の可能性もあるようです。
研究の詳細は、「Archaeological Research in Asia」に掲載されました。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2352226719300741?via%3Dihub#f0005
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